賀曽利隆の観文研時代[74]

下関(16)
下関のフグ(3)

1985年

フグとは?

 フグは河豚とか鰒と書く。マフグ科の海魚の総称である。

 日本人にはなじみの深い魚で、貝塚からはタイやヒラメなどの骨とともに、フグの骨が出土することが多いという。それほど古い時代から食べられてきた。

 とはいっても周知のように内蔵などに毒を持っており、一歩間違えると、命を落としてしまう。

 それだから、昔からフグを食べるのは冒険的なことで、フグが「鉄砲」といわれるゆえんだ。「あたれば死ぬ」のである。フグのちり鍋を「てっちり」というのは、「鉄砲のちり鍋」からきているという。

 フグの内臓の中でも、とくに毒性の強いのが真子(卵巣)と肝(肝臓)で、フグの持っている毒素のテトロドトキシンは煮ても焼いても消えず、青酸カリよりも強力だといわれている。

 皮が有毒な種類もある。

 白子(精巣)が有毒な種類もある。

 日本だけでも20数種のフグが生息しているとのことだが、そのうち食用にされている代表的なフグを一覧表にし、食べられる部分と、食べられない部分に分けてみた。

 これらのフグの中ではトラフグの水揚げが一番多いが、そのほかマフグ、カラスフグ、シマフグなどがトラフグに次いでいる。

 フグは何とも魅惑的な魚。我々日本人にとっては、命を賭けてまで食べたくなる魚なのである。