賀曽利隆の観文研時代[72]

下関(14)

1985年

 観文研(日本観光文化研究所)の月刊誌『あるくみるきく』(第125号)の「下関」取材から8年後の1985年には、「下関のフグ」を食べるため、下関を再訪した。これは観文研の企画による『日本の郷土料理・全12巻』(ぎょうせい刊)の取材行である。

下関のフク

 フグの本場下関では、「フグは彼岸から彼岸まで」と、よくいわれる。

 フグの水揚げは、秋の彼岸の頃から本格化し、春の彼岸を過ぎると減ってくるからだ。

 本場のフグを賞味しようと、時期的にはギリギリになってしまったが、春の彼岸の直前に下関に行った。

 本州最西端駅の下関駅には夕方に着いた。駅舎を出ると、駅前広場のフグのオブジェが目を引く。その数は20匹近い。

下関駅前のフグのオブジェ
下関駅前のフグのオブジェ

 さすがフグの町、下関だけあって、駅の土産物店はフグ一色。

  ふく提灯
  ふく茶漬け
  焼きふく
  ふくの一夜干し
  ふくの粕漬
  ふくの味醂干し
  ………

 下関ではフグのことを「ふく」といっている。ということで、それにならってこの項でもふく、フクと書くことにする。

 ネオンの灯り始めた下関の町を歩くと、さすがフク料理の本場らしく、「ふく料理」とか「ふく刺」、「ふくちり鍋」といった看板のかかった店を何軒も見かける。

「ふくのフルコース」

 そんな看板を掲げた店をみつけた。「さぶ」という居酒屋。フクを肴に酒を出している。

 店に入り、さっそく「ふくのフルコース」を頼んだ。

 店の女将さんはきっぷのいい人で、女将さんの「ふく談義」を聞きながら「ふくのフルコース」を味わうことになる。

「うちでは、トラフク以外は出しませんよ。
 と女将さんはきっぱり宣言する。

 何種もあるフクのうち、トラフクが最上の味なのだという。

「さー、フクのフルコースを食べるぞ!」