賀曽利隆の観文研時代[51]

常願寺川(19)
滑川のホタルイカ(3)

1985年

「ホタルイカ三昧」の朝食をいただいたあと、大浦さんにホタルイカの定置網の話を聞いた。

 ホタルイカの定置網は図のようなもので、それを毎日、早朝に揚げる。

ホタルイカ漁の定置網図
ホタルイカ漁の定置網図

 図のうち、身網がホタルイカを獲る網で、ロープを通した網の周囲には浮をつけ、四方につけたロープの先端に石をくくりつけて海底に沈め、身網を引っ張って固定させる。

 ホタルイカを見網に導き入れる道網の上部は海面に、下部は海底に着くようにする。

 ホタルイカは浜の近くを西から東に回遊する性格を持っているので、道網を前方にみつけたホタルイカの群れは、道網に沿うようにして身網の中に入っていく。

 道網の目の大きさは1尺(約30センチ)ほど。底の方になると倍ぐらいの目の粗さになる。それでもホタルイカは道網をすり抜けていこうとはしない。

 身網の口の部分はこの地方で使っているソーケ(米揚げ笊)のような形をしており、いったん身網の中に入ってしまったホタルイカは、外に出られないような仕組みになっている。

 ここまで理解するのは結構、大変だった。

 大浦さんはどのような定置網なのか、わかりやすいように絵を描いてくれたのだが、それでもなかなか理解できなかった。すると2時間ほどかけてミニチュアの定置網を作ってくれた。そのミニチュアの定置網を使って説明してくれたのだ。もう感謝感激。そのおかげでホタルイカ漁の仕組みを理解することができた。