アフリカ大陸縦断 2013年〜2014年(1)

キリマンジャロが大きく見えてくる

 道祖神の「賀曽利隆と走る!」シリーズの第18弾目は「アフリカ大陸縦断」だ。

 2013年12月18日、ケニアの首都ナイロビを出発。総勢11名。メンバーの最年長は70歳の榛澤さん。バイクはヤマハのセロー。榛澤さんとは「南米・アンデス縦断」を一緒に走ったが、セローはそのときのもの。カソリ号はDR−Z400Sだ。

 ナイロビから170キロ走り、ナマンガの国境を通過。2番目の国、タンザニアに入った。アルーシャに向かって南下すると、前方には標高4556メートルのメルー山が大きく見えてくる。

 国境から100キロでメルー山麓の町、アルーシャに到着。町中を走り抜け、郊外の「ンドロ・ロッジ&キャンプサイト」へ。ここが我々の第1夜目の宿泊地。きれいに刈られた草の上にテントを張るとキャンプ場内のバーに行く。メンバーのみなさんと冷えたビールで乾杯。ビールは「タスカー」。1本3000シリング。日本円の約180円。夕食はキャンプ場内のレストランで「チキン&ライス」を食べた。キャンプ場の周辺は一面の水田。農民たちは稲穂を刈り取り、シートの上で穂を落とし、袋に詰めていた。

 翌日は夜明けとともに起きた。天気は快晴。目の前のメールー山には、まったく雲がかかっていない。右手に見えるアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロにも雲はかかっていない。西の空には十六夜の大きな月が残っていた。

 キャンプ場内のレストランで朝食を食べると、メンバー全員で「目指せ、ケープタウン!」と雄叫びを上げて走り出す。

 キリマンジャロが大きく見えてくる。青空を背にしたキリマンジャロの雪はまぶしいほどに光り輝いている。

 キリマンジャロ山麓の町、モシからはタンザニアの首都ダルエスサラームに通じる幹線国道を行く。大型トラックや長距離バスなど交通量は多い。このあたりからアフリカのシンボル、バオバブの木を目にするようになる。国道沿いのバオバブの大木の下にバイクを止めて小休止。それを見て近くの村からは、子供たちが「ワーッ!」と歓声を上げて集まってきた。我々のバイクは大人気だ。

  • ナイロビを出発
    ナイロビを出発

 モシから380キロほど走ると、タンザニアの首都ダルエスサラームとザンビアの首都ルサカを結ぶ国道1号に出る。このチャリンゼの交差点を右折してモロゴロへ。街道沿いのホテルで泊まった。夕食は「ウガリ・ナ・セマキ」。ウガリはトウモロコシの粉を熱湯で練り固めて餅状にしたもの。ケニアやタンザニアの主食になっている。セマキは魚。皿にはウガリと焼き魚が1匹のっている。それに汁がついている。ウガリを手でつかみ、丸めて汁をつけて食べるのだ。

 モロゴロから50キロほど走るとミクミ・ナショナルパークに入る。東アフリカのナショナルパークはどこも2輪は通行禁止だが、ミクミ・ナショナルパークのように幹線道路が通ってるところは自由に走れるし、入園料は取られない。ここではキリンやシマウマ、バッファロー、インパラ、トムソンガゼルなど、次々に野生動物を見た。キリンの群れと出会ったときは、思わずDR−Z400Sを止めて見入ってしまった。

 イリンガを通り、国境のムベヤへ。2車線のハイウエイを100キロ超で走る。大型バスや大型トラックも100キロ前後で疾走する。恐いのは対向の大型バスの無理な追い越しだ。DR−Z400Sが相当、接近しているというのに、大型バスは強引に追い越しをかけてくる。衝突を避けるために速度を落として路肩に逃げたが、それがたび重なるとだんだん腹がたってくる。「よーし!」とばかりに、対向の大型バスが無理な追い越しをかけてきたときは最後の最後まで速度も落とさず、逃げることもしないで走りつづけた。大型バスは「ブブブブーーーー」とクラクションを鳴らしつづける。最後の瞬間で左に避けたが、大型バスの運転手は青い顔をしていた。

 ムベアからはザンビア国境に通じる国道1号を離れてマラウィ国境へ。高原地帯を縫って走る。通り過ぎていく集落の周辺は一面のバナナ園。丘陵地帯の斜面は一面の茶畑になっている。タンザニアはキリマンジャロ・コーヒーでよく知られているが、このように茶も栽培されている。ムベアから25キロ走るとマラウィ国境に到着。バイクを止めると、マネーチェンジャーたちが集まってきた。ここには両替所がないので、騙される危険を覚悟で替えてもらったが、幸いたいしたトラブルもなく、マラウィのお金のクワチャを手に入れた。

 第3番目の国、マラウィに入ると、東アフリカの共通語のスワヒリ語はほとんど通用しなくなる。国境の食堂で「シーマ」を食べたが、それは東アフリカのウガリとまったく同じもの。国境を越えるとこのように言葉が変わり、民族が変わるが、変わらない文化もある。それらを見られるのが「国境越え」のおもしろさといっていい。

  • ここはチャリンゼのT字路
    ここはチャリンゼのT字路

 南北に細長い国、マラウィを南下する。首都のリロングウェに通じる幹線道路で2車線の舗装路なのだが、交通量はきわめて少ない。タンザニアのように大型トラックや大型バスと頻繁にすれ違うこともない。そのかわり自転車が多くなった。

 右手に見える山並みはグレートリフトバレー(大地溝帯)の西縁。北は中東のヨルダン河谷から南はザンベジ河口までつづくグレートリフトバレーは世界最大の地溝帯。この先、何万年か何億年か知らないが、アフリカ大陸が2つに割れるときはこの線で割れるのは間違いない。南北580キロという世界第10位の大湖、マラウィ湖はこのグレートリフトバレー内にある。

 左手にはマラウィ湖が見えてくる。このあたりが湖の北端。それにしても、とてつもない長さだ。日本にあてはめれば東京から大阪までが湖ということになる。行けども行けどもマラウィ湖を見つづけながらDR−Z400Sを走らせる。

 マラウィでの第1夜目はマラウィ湖畔でのキャンプ。「チティンバ・キャンプ場」のテントサイトはきれいな芝生。湖畔にはファイヤー・プレースもある。さっそく焚き木を集めて焚火した。大きな夕日がマラウィ湖対岸のタンザニアの山々に落ちていく。夕食はキャンプ場内のレストランで。まずはマラウィ産のビール「クチェクチェ」でみなさんと乾杯。そのあとライス&ビーフの夕食を食べた。

 マラウィを南下し、マラウィ中部のムズズを過ぎたところでは、警官に止められた。「しまった!」と思ったときはもう遅い。スピード違反で捕まった。スピードガンでの計測。30キロオーバーの罰金の5000クワチャ(約1250円)はその場で払った。

 マラウィ湖畔のンカタベイでは連泊した。驚いたことに港には1000トン以上はありそうな大きな船が停泊していた。マラウィ湖の湖畔に造船所があるとも思えないので、「いったい、どこから運び入れたのだろう」とメンバー全員で頭をひねった。

  • マラウイ湖畔の「チティンバ・キャンプ場」に到着
    マラウイ湖畔の「チティンバ・キャンプ場」に到着

 マラウィ南部に入っていくと交通量は少しは多くなった。首都のリロングウェに近いサリマでは大統領一行とすれ違った。警官が大勢出て、すべての交通を止める。その中を大統領一行の乗った何台もの車が猛スピードで走り抜けていく。どの車に大統領が乗っているのかはわからなかった。

 サリマでマラウィ湖を離れる。首都のリロングウェに向かっていくと交通量が一気に多くなる。ゆるやかな登り。バイクを止めると、我々は高台から雄大な風景を見下ろした。首都のリロングウェに到着すると、ファストフード店で昼食。ハンバーガーとフライドポテトを食べた。

 リロングウェから130キロ走り、ザンビア国境に到着。国境で両替をすると1USドルが5クワチャ。1ザンビア・クワチャは約20円だ。国境近くの町、チパタで給油し、郊外の「ママルーラ・キャンプ場」に泊まった。

 テントを張り終えると、まずはキャンプ場内のバーでザンビア産ビールの「モシ」を飲む。1本10クワチャ(約200円)。そのあとキャンプ場内のレストランで夕食。イタリア料理の「ラザニア」を食べた。ザンビアの辺境の地といってもいいようなチパタのキャンプ場で食べる「ラザニア」はおいしかった。

 翌朝はキャンプ場内のマンゴーの木の枝に飛びつき、食べごろのマンゴーを取って、顔中をベトベトにしながら食べた。マンゴーはぼくの大好物なのだ。

 ザンビアの首都のルサカへ。その途中では、カチョローラ村の「カチョローラ・キャンプ場」に泊まった。ここではキャンプ場のオーナーのジョージと話した。ジョージの話で忘れられないのは「メイドinチャイナ」。ザンビアにはものすごい勢いで中国製品が入り込んでいる。しかし「メイドinチャイナ」は衣類でも靴でも電器でも、何でもすぐにダメになるという。それに対して「メイドinジャパン」は丈夫で長持ちし、「フォーエバー(永遠)」だという。

 だがその後がいい。ジョージは「But Chaina is good country(だけど中国はいい国だ)」という。ジョージの「But Chaina is good country」は大うけで、その後、我々の流行語になった。

  • マラウィの首都リロングウェからザンビア国境へ
    マラウィの首都リロングウェからザンビア国境へ

 ザンビアの首都のルサカからジンバブエ国境のリビングストンに向かう。その間は480キロ。リビングストンの人口は10万人で、ザンビアでは3番目に大きな町になる。

 リビングストンからジンバブウェ国境まで10キロほど。ザンビアでの出国手続きを終えると、ザンベジ川にかかる橋を渡ってジンバブウェに入った。いよいよ、「アフリカ大陸縦断」のハイライトシーン、世界最大のビクトリアの滝を見る時がやってきた。

 ゲートで入園料を払い、かわいらしい猿が群れる森の中を通り抜けると、目の前に巨大なビクトリア滝が現れた。あまりのすごさにしばらくは声も出ない。

 ザンビアとの国境を流れるアフリカ第4の大河、ザンベジ川が幅1700メートルにわたって118メートルの落差で落ちていく。大滝には虹が何本もかかっている。夕立のような水しぶきを浴びて体中が濡れるのも忘れ、茫然として大自然の驚異に見入った。大滝を目の前して「おー、これぞアフリカ!」と叫んでしまった。

 その夜は大晦日。ビクトリアの滝に近いキャンプ場で泊まったが、午前0時になると花火が打ち上げられ、町のあちこちから「ハピーニューイヤー!」の声が聞こえてくる。

 2013年から2014年に変わった!

  • ザンビアの首都ルサカに到着
    ザンビアの首都ルサカに到着