賀曽利隆の観文研時代[44]

常願寺川(12)

「大仙坊」では3泊したが、とってもよくしてもらった。おじいさんにはいろいろな話を聞かせてもらった。

 芦峅寺を離れる日の朝、若奥さんはおみやげにといって、自家製のわさび漬を瓶に詰めてもたせてくれた。

 前日までの晴天とはうってかわって、この日は朝から雨が降っている。それでも帰るのだ。

 雨具を着て、芦峅寺を出発。

 雨は激しくなる一方で、雨に打たれながらXL250を走らせる。雪にならなくてよかった。

 芦峅寺からは常願寺川の流れに沿って走り、扇状地から富山平野に入っていく。常願寺川の河口はどうしても見たいところだったので、国道8号に出ると富山方向に走り、常願寺川にかかる橋を渡った。橋を渡り終えたところで国道8号を右折し、常願寺川左岸の堤防上の道を走った。

 源流から常願寺川の流れを見てきたが、下流になると、常願寺川にはもう暴れ川の面影はない。おさえつけられて、すっかりおとなしくなったような感じだ。

 川の流れというのはおもしろい。まるで人の一生を見るようだ。

 立山連峰から流れ出たばかりの頃は、常願寺川は赤ん坊のような可愛らしい流れだった。それが大岩を押し流すような暴れ川に成長し、富山平野に入るとゆったりと流れる。

 北陸本線のガードをくぐると、常願寺川の河口は近い。そこでは、砂利が採取されていた。河原に群がるダンプカーは、まるでいじめっこのように見えた。

 常願寺川は最後はひっそりと、富山湾に流れ出ていく。

常願寺川の河口
常願寺川の河口