日本16端紀行[03]

2019年9月15日

佐多岬の思い出

 第5日目の9月15日、夜明けとともに大泊の「ホテル佐多岬」を出発。前日につづいて日本本土最南端の佐多岬に行く。

 ぼくが初めて佐多岬に行ったのは「30代編日本一周」(1978年)の時のことだった。岬に立って東シナ海に沈む夕日が見たかったのだが、佐多岬入口の大泊に着いたときは17時を過ぎていた。当時、大泊−佐多岬間は有料の佐多岬ロードパークで、17時にゲートが閉められた。

 そこでまだ明るいうちから浜辺で野宿し、流木を集めて火を焚いた。暗くなると集落からは「夕焼け放送」が聞こえてきた。小中学生が交代で本を朗読する声が、スピーカーにのって流れてきた。漁港からは漁船が次々に出ていき、やがて黒々とした水平線上に、まばゆいほどの漁火がともった。翌朝8時にゲートが開くのを待って、往復400円の有料道路代を払い、佐多岬に向かったのだ。そんな思い出がつい昨日のことのように思い出されてくるのだった。

 大泊から佐多岬への道は現在は無料。佐多岬の駐車場に到着すると、新しく作られた展望台まで歩いていく。その途中では御崎神社を参拝。展望台に立つと、朝日に染まる岬突端の風景を眺めた。

 目の前の大輪島にある佐多岬灯台は慶応2年(1866年)、江戸幕府と米、英、仏、蘭の4ヵ国との間で取り決められた条約に基づいて、全国8ヶ所に設置された灯台の1つ。明治4年(1871年)の完成時は菜種油を使っていたという。

 ここからは大隈海峡を隔てて種子島、屋久島、口永良部島が見えるのだが、残念ながら水平線上には靄がかかって島々は見えなかった。

 佐多岬から「ホテル佐多岬」に戻ると、朝食を食べ、大泊漁港岸壁の「最南端ミーティング2019」の会場へ。日本各地から集まったライダーのみなさんたちとの楽しい歓談。我らライダー同士、話が弾む。

「SOUTHERN24」のスタート

 8時30分、主催者の風間深志さんの挨拶のあと、ブリーフィングがあって、ツーリングラリー「SOUTHERN24」開始。11時にゼッケン番号順に走り出す。各人それぞれのルートで日本本土最西端の神崎鼻を目指すのだ。制限時間は24時間。

 ぼくは「中央ルート」を行く。SSTRと同じ100番のゼッケンをVストローム250に貼って出発だ。

 神崎鼻までの間には「なんたん市場」(鹿児島県南大隅町)、「道の駅たるみず」(鹿児島県垂水市)、「花の駅生駒高原」(宮崎県小林市)、「いくばい益城笑店街」(熊本県益城町)、「風の里キャンプ場」(熊本県西原村)、「道の駅させぼっくす99」の6地点のチェックポイントがある。ラリー帳にそれらのスタンプを押し、神崎鼻に近い「長串山公園」(長崎県佐世保市)にゴールするのだ。

 大泊から県道68号で佐多へ。佐多からは国道269号を北上し、根占温泉「ネッピー館」に隣り合った「なんたん市場」でラリー帳に最初のスタンプを押した。

 国道269号で南大隅町から錦江町に入る。根占は南大隅町、大根占は錦江町になる。

 鹿屋市に入り、鹿屋の町へ。ここでは海上自衛隊鹿屋航空基地にある「鹿屋航空基地資料館」を見学。館内には復元された零戦が展示されている。鹿屋基地からは太平洋戦争中、1000人を超える神風特攻隊の隊員が飛び立った。その資料が多数、展示されている。前庭には海上自衛隊の対潜哨戒機P−2Jや救難飛行艇のUS−1Aなどが展示されている。

 見学を終えたところで、資料館前の「鹿屋市観光物産総合センター」内のレストランで昼食。「鹿屋海軍カレー」を食べた。

 鹿屋からは国道220号を行く。垂水の町を走り抜け、桜島への道との分岐を過ぎ、2番目のチェックポイント、道の駅「たるみず」に到着。ラリー帳にスタンプを押す。ここには温泉施設「湯ったり館」があるが、残念ながら入っている時間はないので足湯につかった。

 国分(霧島市)で国道10号に合流すると、国分ICから高速道に入る。東九州道→九州道→宮崎道と走りつなぎ、小林ICで高速道を降りた。ここから、えびのスカイラインの県道1号で生駒高原へ。3番目のチェックポイントの「生駒高原」ではラリー帳にスタンプを押したあと、マンゴーのソフトクリームを食べてひと息入れた。生駒高原といえばコスモスだが、コスモスの花が咲き始めていた。

 小林ICに戻ると宮崎道→九州道→九州中央道と高速道を走り、小池高山ICで高速道を降り、国道443号で益城へ。熊本地震で大きな被害を受けた益城町だが、中心地の木山にある「いくばい益城笑店街」が4番目のチェックポイントだ。ここではプレハブの仮設商店街にある「きやま食堂」で「海鮮焼きそば」を食べ、スタンプの代わりに経営者の岩崎さんの印鑑を押してもらった。

トラクターと一緒に走る

 益城を出発。夕暮れの阿蘇に向かってVストローム250を走らせる。県道28号で西原村に向かったのだが、通行止でう回路に入った。ところが道を間違え、阿蘇山麓をウロウロ走りまわってしまった。

 やっとの思いで5番目のチェックポイント、「風の里キャップ場」の近くまで来たのだが、またしても道を間違えてしまった。何ともありがたいことに、農作業を終えたトラクターが道案内をしてくれた。その後について走り、「風の里キャンプ場」に到着。トラクターと一緒に走るのは我がバイク人生でも初めての経験。「風の里キャンプ場」にはスタンプはないので、ラリー帳にはキャンプ場の管理人、小城さんの印鑑を押してもらった。

 西原村から国道57号に出ると、熊本ICで高速道に入る。九州道→長崎道と走り、武雄JCTから西九州道に入る。ここでVストローム250は11万キロを突破。「やったね!」と、雄叫びを上げるカソリだ。

 佐世保を通過し、相浦中里ICで西九州道を降り、第6番目のチェックポイント、道の駅「させぼっくす99」へ。ラリー帳に最後のスタンプを押した。ここのスタンプは高速道のSAやPAと同じように、24時間押せるようになっていた。

 意気揚々とした気分で相浦中里ICに戻り、西九州道の終点、佐々ICへ。今晩の宿、佐々IC近くの「パラダイスイン」に到着したのは24時30分。ベッドに横になると、すぐさま深い眠りに落ちていくのだった。