『地平線通信』2021年4月号より

●3月号の『地平線通信』でみなさんにお伝えしたように、東日本大震災から10年目の3月11日、「鵜ノ子岬→尻屋崎2021」に出発しました。鵜ノ子岬は東北太平洋岸最南端の岬、尻屋崎は東北太平洋岸最北端の岬です。第1夜目の宿は四倉舞子温泉(いわき市)の「よこ川荘」。ここで渡辺哲さんと古山里美さんと合流しました。翌日、3台のバイクで北上。古山さんとは相馬で別れましたが、渡辺さんとは3日間、一緒に走りました。東日本大震災から10年目ということで、行く先々の被災地の10年間の変化を見てまわりました。福島県の双葉町では廃校になった双葉高校に立ち寄りましたが、ここは渡辺さんの母校。東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故で、100年近い歴史のある学校は廃校に追い込まれたのです。校庭に設置された線量計は0・191マイクロシーベルトと、放射線量は小数点以下に下がっていました。双葉町では海岸近くに復興の拠点となる「伝承館」と「交流センター」が完成し、震災遺構の請戸小学校が公開に向けて準備中でした。

●福島県から宮城県に入り、第2夜目は石巻の「サンファンヴィレッジ」に泊まりました。石巻から牡鹿半島を一周し、女川からは雄勝に行きました。雄勝は震災以降、まるで見捨てられたかのようでしたが、ここに来て急ピッチで復興が進んでいます。高台移転した町が姿を現し、道路も高台に付け替えられました。見上げるような防潮堤に囲まれた海岸には「雄勝硯伝統会館」と「交流館」が完成。志津川(南三陸町)では「南三陸さんさん商店街」と「震災復興祈念公園」を結ぶ歩行者専用の中橋が完成しました。

●宮城県から岩手県に入り、第3夜目の宿は山田のうみねこ温泉「湯らっくす」です。三陸鉄道陸中山田駅の駅前温泉です。駅前にはスーパーマーケットもできています。この日は大雨に降られたので、湯から上がると、駅前の居酒屋「四季海郷」で渡辺さんとご苦労さん会の飲み会。大津波に襲われて壊滅状態になった山田の町は、10年間でここまで復興しています。翌日、陸中山田駅前で渡辺さんと別れ、さらに北へ。宮古を過ぎると、雨は雪に変わりました。田野畑村に入り、国道45号から海沿いのルートを行くと通行止。う回路を行くと、路面に積もった雪でまったく坂道を登れず、来た道を引き返すという場面もありました。春まだ遠い東北でした。

●国道45号に戻ると、雪に降られながらバイクを走らせ、青森県に入りました。八戸では雪が止んで助かりましたが、三沢から尻屋崎までは雪。3月の北東北は冬同然です。吹雪に見舞われて、尻屋崎まで行くのを断念したこともありましたが、今回は尻屋崎に到着できました。岬への道は冬期閉鎖中なので、尻屋の集落を走り抜けた尻屋漁港をゴールにし、漁港の岸壁にバイクを止めました。第4夜目はむつ市内の石神温泉に泊まり、「鵜ノ子岬→尻屋崎2021」を走り終えた喜びで、自分一人で生ビールを飲み干すのでした。

●尻屋崎から鵜ノ子岬への復路では、太平洋岸を縦貫する高速道路を南下しました。東日本大震災以降、「復興」の旗印のもと、驚異的な速さで高速道路が開通しています。まずは下北道。むつ市内の1区間が開通。つづいて横浜吹越ICから終点の野辺地ICまで走りました。国道45号経由で上北道に入ると、第2みちのく道路→百石下田道路→八戸道で八戸JCTへ。ここからが三陸道で、仙台までの全線開通が間近です。開通直後の気仙沼を走り抜けましたが、「時代が変わった!」と強く実感しました。三陸道から仙台東部道路経由で常磐道に入り、いわき勿来ICで常磐道を降り、鵜ノ子岬に戻ったのです。この間、宮古〜盛岡と相馬〜福島の横断道路は開通目前でした。

●こうして「鵜ノ子岬→尻屋崎2021」を走り終えると、今度は「青春18きっぷ」を使って東北の太平洋岸を見てまわりました。東京から常磐線で水戸へ。一昨年の台風19号で大きな被害を受けた水郡線は3月28日に全線開通し、それに合わせての東北なのです。郡山からは東北本線で福島、仙台を通り、一関へ。一関から大船渡線で気仙沼へ。「一関〜気仙沼」は鉄路です。気仙沼の駅前ホテルに泊まり、翌日はBRT(バス高速輸送システム)の赤いバスに乗って陸前高田から大船渡へ。終点の盛までが大船渡線になります。盛から三陸鉄道で釜石へ。釜石からは釜石線で盛岡へ。盛岡からは山田線で宮古へ。本数の少ない釜石線、山田線で北上山地を横断できたのは大収穫でした。宮古から三陸鉄道で久慈へ。久慈からは八戸線で八戸へ。最後は青い森鉄道で青森へ。「東京→青森」は「青春18きっぷ」2日分の4820円と、三陸鉄道「盛→釜石」の1100円、三陸鉄道「宮古→久慈」の1890円で、合計7810円でした。青い森鉄道は青森まで途中下車しなければ、青春18きっぷが使えます。また明日からは、まだ残っている2日分の青春18きっぷを使って東北をまわってきますよ。(賀曽利隆)