房総半島一周(前編)

2025年2月20日

 2月20日5時30分、神奈川県伊勢原市の自宅を出発。天気は快晴。今日はVストローム250SXを走らせての「房総半島一周」。伊勢原大山ICから新東名→東名で都内に入り、日本橋から千葉街道の国道14号を行く。江戸川を渡って千葉県の市川へ。市川を出発点にして「房総半島一周」を開始する。

 市川から京葉道路→館山道→国道16号で第1番目の岬の富津岬へ。岬めぐりの「房総半島一周」だ。

 富津岬は東京湾に延びた長さ5キロほどの砂州でできている。岬を境にして北は日本有数の臨海工業地帯の京葉工業地帯、南は風光明媚な南房総国定公園。富津岬の北と南では、世界がガラリと変わる。

 富津岬の突端まで行くと、まるで積み木細工のようにコンクリートのテラスを積み重ねて階段でつながった何とも奇妙な、それでいて印象的な展望台がある。息を切らして最上階まで登ると360度の大展望が開ける。砂州の中を走るU字型の道を見下ろす。目を左に移すと、新日鉄の君津製鉄所が威容を誇っている。前面の海は浦賀水道。その狭い海を大小さまざまな船が行き来している。対岸は観音崎。三浦半島の向こうには富士山が大きく見えている。

 富津岬から国道127号に出ると内房海岸を南下。東京湾フェリーの出る金谷を過ぎたところが第2番目の明鐘岬。岬のトンネルを抜けたところでVストローム250SXを止めて明鐘岬を見る。鋸山(330m)が東京湾に落ち込むところが明鐘岬で、岬は「房総国境」になっている。ここからも富士山が見える。

 我々はあまり意味を考えないで「房総」とか「房総半島」とか言っているが、「房総」は北の「総」と南の「安房」の合成語。総は上総と下総の2国に分国されたが、南は安房一国。房総国境は鋸山から清澄山へとつづく房総丘陵の稜線。房総国境を越えて安房に入ると日の光は強くなり、山々の緑は濃くなり、潮の香が漂ってくる。

 第3番目の岬は大房岬。館山湾北側の岬で国道127号の冨浦から入っていく。岬突端の展望台からは浦賀水道越しに三浦半島の剱崎を見る。

 館山からは館山湾沿いの県道257号を走り、第4番目の岬の洲崎へ。房総半島南西端の洲崎は大きな境目。東京湾の「内房海岸」と太平洋の「外房海岸」はここで分かれる。岬の展望台からは三浦半島や伊豆半島、伊豆大島、富士山を眺める。

 灯台入口の「森田屋商店」で自家製の「ところてん」(500円)を食べる。酢醤油で食べる。「森田屋商店」では庭先では、洲崎の海で採れたところてんの原料になる海草のテングサを天日で干している。

 洲崎から近くの洲崎神社へ。ここは安房一宮。急な石段を登って拝殿へ。社殿裏手の御手洗山は斧のまったく入っていない自然林。山の下半分のシイや上半分のヒメユズリハなどを中心とした照葉樹林が濃い緑をつくり出している。この御手洗山は千葉県でも一番といっていいほどの自然林の残る山なのだ。

 第5番目の野島崎に到着。ここは房総半島最南端の岬。まずは厳島神社を参拝。ここには見事な男根と女陰の貝が奉納されている。そして灯台へ。野島埼灯台は登れる灯台。灯台の上から白浜海岸を見下ろす。遊歩道で野島崎を歩いたあとは、磯料理店の「三愛」で「なめろう丼」(1200円)を食べた。外房の郷土料理「なめろう」を丼飯の上にのせ、生卵を落としたもの。これはアジのなめろうだとのことだが、サバやサンマ、イワシのなめろうもある。なめろうを焼いたものが「さんが焼き」になる。

 野島崎を出発。海沿いの道を走り、国道410号に合流。千倉温泉を通り、国道128号で外房海岸を行く。

 鴨川の町を走り抜け、小湊では誕生寺を参拝。ここは日蓮誕生の地。小湊はタイの生息地で、鯛見物のできる名所の鯛ノ浦がある。

 鴨川市から勝浦市に入る。この鴨川・勝浦の市境が安房・上総の国境になる。

 勝浦市の興津を過ぎたところが懐かしの鵜原だ。

 鵜原海岸でVストローム250SXを止めた。ここは「生涯旅人カソリ」の原点。高校3年の夏休みのことだ。友人の前野幹夫君ら3人とテントや食料を持って鵜原海岸でキャンプした。その時、我々は「アフリカに行こう!」と思い立った。それから2年後の1968年4月12日、前野君とカソリの2人は、2台のスズキTC250と共に横浜港からオランダ船の「ルイス号」に乗ってアフリカへと旅立った。

 そんな鵜原から勝浦の町に入っていく。勝浦漁港から第6番目の八幡岬へ。勝浦湾の東側に突き出た岬だ。展望台には徳川家康の側室「お万の方」の像が建っている。ここは絶景岬。八幡岬から続く断崖上の勝浦灯台を見る。

 勝浦から御宿へ。御宿海岸の砂浜には「月の沙漠像」が建っている。

 大原では第7番目の八幡岬、大原を過ぎたところでは第8番目の太東崎に立った。太東崎の展望台から南側に目を向けると、夷隅川の河口が見える。その向こうには大原漁港の八幡岬がよく見える。北側に目を向けると、九十九里浜の湾曲した長い海岸線がどこまでも延びている。

 国道128号から県道30号に入り、九十九里浜を行く。一宮海岸を通り、白子海岸へ。白子温泉のホテル「カアナパリ」に一晩、泊った。ホテル名の「カアナパリ」というのはハワイのカアナパリビーチに由来するという。ここまで市川からは278キロだ。