2010年6月21日
「岬」について考えた
2010年6月21日6時、墾丁のリゾートホテル「福容大飯店」を出発。アドレスV125Gを走らせ、台湾最南端の鵝鑾鼻に向かう。海岸には船帆岩。台鈴の李さんは、
「(この岩は)アメリカの元大統領、ニクソンに似ているっていわれてるよ」
と教えてくれた。そういわれてみると、尖った鼻が似ているようにも見える。
台湾最南の町を走り抜け、台湾最南の旅館の前を通り過ぎ、鵝鑾鼻の入口へ。そこからは亜熱帯樹のおい茂る林間の小道を歩き、ついに東経120度50分00秒、北緯21度53分59秒の鵝鑾鼻に立った。
鵝鑾鼻は今回の「台湾一周」では一番期待したポイントなので、まさに感動の瞬間だ。
目の前にはフィリピンのルソン島との間のバシー海峡が広がっている。水平線上に島影は見えない。岬のすぐ沖を漁船が通り過ぎていった。
台湾最南端碑の前で台鈴のみなさんと一緒に記念撮影。
最南端碑の前には最南端周辺の案内図がある。
それを見ながらカソリ、「岬」について考えた。
鵝鑾鼻の「鼻」は「岬」を意味している。日本でも岬、崎のほかに鼻のついた岬名は数多くある。日本本土最西端の岬は神崎鼻、薩摩半島最南端の岬は長崎鼻…といった具合だ。
台湾最北端の岬は基隆の北の富貴角、台湾最東端の岬は三貂角で、この「角」も岬を意味している。三貂角のすぐ北には鼻頭角がある。そのほか台湾の地図をざっと見渡してみると、基隆の近くには野柳岬がある。台湾では「岬」という字が、日本で意味するところの岬として使われている。
「峠」は日本人の作り出した日本の国字だが、「岬」は漢字だ。しかし意味はまったく違う。中国語の岬は英語でいうところの「ケープ」や「ポイント」でなく、山々が平地に落ちる先端をいう。日本で言えば「山崎」に近い。
中国には地形としての岬は数多くあるが、地名としての岬はひとつもない。半島名はあっても岬名のないのが中国。それは朝鮮半島も同様で、半島名はあっても岬名はない。このあたりは朝鮮半島が日本以上に中国文化の影響を強く受けてきたからだろう。
岬名のある、なしは日本と中国との大きな違いになっている。台湾は岬名の数はそれほど多くはないが、日本と中国の中間にある国といっていい。
台湾最南端の岬、鵝鑾鼻に立ったあと、岬周辺に広がる鵝鑾鼻公園を歩いた。きれいな園地。高台からは北へと延びる台湾西海岸の海岸線を望む。そこには白亜の鵝鑾鼻灯台。案内板によると初点灯は1882年で、高さ21メートル、海面からの高さは55メートとある。
鵝鑾鼻公園には台湾の領域を示す「台湾全図」があった。台鈴の李さんは、全図の右上にある枠で囲った部分を指さして言う。
「カソリさん、ここは台湾領。日本領でも中国領でもないからね」
李さんが指さしたところには「釣魚台」と書かれている。台湾では尖閣諸島のことを釣魚台といっている。主島の魚釣島からきているのだろう。李さんの言葉でひとつ興味深かったのは、「中国領でもないからね」だった。ここでも台湾は台湾、中国は中国という台湾人の強い気持ちの一端がうかがい知れた。
最後に台湾最南の廟、保安宮を参拝し、鵝鑾鼻を離れた。
来た道を戻り、墾丁の「マクドナルド」で朝食。チーズバーガーを食べた。そして墾丁から恒春、車城を通り、台東への道が分岐する楓港に到着。ここから台湾の東海岸に入っていくのだ。
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