第4回目(13)2012年3月10日 – 21日
「スズキきずなキャリーキャラバン」の活動
3月16日。目覚めるとすぐに「松島センチュリーホテル」の朝湯に入った。最高の気持ち良さ。目覚めてすぐ入る朝湯は最高だ。ここは絶景湯。大浴場の湯につかりながら「日本三景」の松島を眺めた。
湯から上がると、1時間ほど早朝の松島を歩いた。松島のシンボルの五大堂から国宝の瑞巌寺へ。松島は今回の大津波では他所と比べると被害は少なく、五大堂も瑞巌寺も無事だった。
松島は復興一番乗りといってもいいほどで、観光客の客足もかなり戻ってきている。
しかし松島にもかなりの大津波が押し寄せたのは間違いない。「松島センチュリーホテル」に貼ってあった大津波の写真を見ると、それがよくわかる。水中には何台もの観光バスや乗用車が浮かんでいる。水の引いた商店街には車の残骸が見られる。桟橋に乗り上げた観光船も見られる。実際、桟橋の一部は激しく壊れ、福浦島への橋は通行止めのままになっている。
隣の東松島市では1000人以上もの犠牲者が出たが、松島町では死者1人。これは奇跡といっていい。
「松島センチュリーホテル」に戻ると朝食。ボリューム満点の朝食を食べ終ると、スズキ村上さんとホテルを出る。
8時30分、「スズキきずなキャリーキャラバン」のみなさんの乗った車がホテルにやってきた。
さー、出発だ。
V−ストローム650で村上さんの乗った車、「スズキきずなキャリーキャラバン」の車の後について走る。
今日の目的地は石巻の仮設住宅。万石浦から県道234号を行ったところにある「石巻バイパス仮設住宅」に到着だ。ここには236戸の仮設住宅があるとのことで、石巻市や女川町の被災者が住んでいる。
バイクやスクーターはみなさんにとっての重要な足。スズキはそれらを無料で点検している。まさに東北の復興支援、復興応援事業なのだ。
ぼくは何をするかというと、ここから大阪モーターサイクルショー会場のスズキ・ブースに携帯で電話し、MCの原智美さんに現地の様子、「スズキきずなキャリーキャラバン」の活動の様子などを午前中に1回、午後2回、話すのだ。
すごくよかったのはここではいろいろな話を聞けたこと。
女川の尾浦の漁師さんの話は興味深かった。
銀ザケ、ホタテ、カキ、ホヤの養殖が尾浦の漁業を支える4本柱だったが、大津波ですべてが全滅。とくに出荷直前の銀ザケの被害が大きく、莫大な借金だけが残ったという。
女川の尾浦の漁師の奥さんは怖くて海が見られない、松島の遊覧船も怖くて乗れない、瓦礫の山を見ると気持ちが暗くなってしまう、この1年は毎日のように泣いていた…といった話をしてくれた。
そのほか日本中から来てくれたボランティアの人たちに助けられた、家が流されたとたんに親戚の人たちがすーっと離れていった、1日も早く以前のような家に住みたい、以前のような暮らしに戻りたい…といったみなさん方からの切実な声も聞いた。
「石巻バイパス仮設住宅」での「スズキきずなキャリーキャラバン」の活動は15時30分で終了。「松島センチュリーホテル」に連泊するので、ここでいったんみなさんと別れ、ぼくはV−ストローム650を走らせて石巻に向かう。
石巻に到着すると、旧北上川河畔の日和山に登った。日和山公園内には「奥の細道」の芭蕉&曽良像が建っているが、その像は無事だ。
日和山の鹿島御児神社の鳥居前から旧北上川の河口を見下ろした。大津波から1年たったというのに、まったく復興のきざしの見えない石巻。あまりにも無残な姿に変わり果ててしまった町並みには、もう言葉もない。
東日本大震災での石巻市全体の犠牲者は3000人を上回る。東北太平洋岸の市町村の中では群を抜く数字だ。鹿島御児神社前の展望台には多くの花が供えられているが、そこで手を合わせ、亡くなられた大勢の方々の冥福を祈った。
日和山を下ると、廃墟と化した日和山下の町並みをひと回りした。
石巻からはさらに奥松島の宮戸島まで行く。宮戸島は松島湾では最大の島。短い橋で本土とつながっているが、よっぽど気をつけていないと、わからないまま通りすぎてしまう。
宮戸島では「松島四大観」の筆頭といわれる大高森(105m)に登り、「日本三景」の松島を一望した。寒風沢島や桂島などの浦戸諸島の島々が間近に見える。さらに「日本三大渓」の「嵯峨渓」を歩いた。見事な海岸美。東北の自然の美しさは変わらない。
宮戸島をあとにすると、野蒜、東名と東松島市の被災地を通り、松島に戻った。
「松島センチュリーホテル」でスズキの村上さんらと落ち合い、ホテル近くの「さんとり茶屋」で夕食。地酒の「小僧山水」を飲みながら、タコの唐揚げ、カキの殻焼き、ホッキの刺身など松島の海の幸を食べた。
村上さんのお父さんの出身地は塩竃、お母さんの出身地は秋保で、ともに宮城県内だ。塩竃と秋保、東北の海と山の話を聞いていると酒量は上がり、村上さんとしこたま「小僧山水」を飲むのだった。
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