第1回目(12)2011年5月10日-20日

広田漁港はいまだに断水が続く

 陸前高田を出発。町を出たところで国道45号を右折し、県道38号で広田半島に入っていく。ゆるやかに下ったところで県道38号の旧道と交差するが、一帯は空爆でもされたかのような被害地域が帯状になって延びている。ここは大津波が激突した現場。広田半島の両方向から巨大な壁となって押し寄せた大津波が激突した現場なのだ。

 県道38号で広田半島を一周する。

 広田半島の漁業の中心地、広田漁港は大津波の被害を相当受けたのだろう、漁港に漁船は見られず、閑散としていた。広田漁港を取り囲む防潮堤は無傷で残ったが、大津波はその上を乗り越えていったという。

 ここでは東日本大震災から2ヵ月が過ぎたというのに、いまだに断水がつづき、給水車が断水地域をまわっていた。

 広田漁港から半島最南端の広田崎へ。岬の突端に立つと、目の前にはウミネコの椿島が見える。対岸には長々と延びる唐桑半島が見える。絶景岬からの眺めは、いつもと変らないものだった。

 広田崎近くの小さな漁港では、1隻の漁船が東日本大震災後、初めての漁に出てカニ、タコなどをゴッソリ獲って帰港した。しかし出荷する市場もなく、製氷工場も壊滅状態で氷もなく、ご近所のみなさんに配るのだという。

 漁師さんの話は壮絶なものだった。

 大地震のあと、大津波が来そうだとわかったとき、家族の反対を押し切って港に急行。船をつないだロープを鉈でたち切り、エンジン全開で沖に逃げた。間一髪で間に合ったが、もたもたしてロープをはずしていたら、港内に押し寄せた大津波に飲み込まれてしまったという。

 広田半島のもうひとつの岬、黒崎へ。

 黒崎神社に参拝し、遊歩道を歩き、名勝の黒崎仙峡の断崖を見た。スパッと鉈で割ったかのような岩の割れ目。その先の岬の突端に立つと、しばらくはきれいな三陸の海を見つづけた。黒崎神社に戻ると、営業している黒崎仙峡温泉の湯に入った。

 湯から上がると、広田半島中心の広田へ。交差点の道標は4方向とも県道38号。旧道と新道があるのでわかりにくいが、広田半島のメインルートはすべてが県道38号といってもいいほどだ。

 広田から県道38号で大船渡市の末崎半島に向かっていく。JR大船渡線の踏み切りを渡ったが、線路はグニャッと曲がって流されていた。これもすさまじい光景だった。