第1回目(13)2011年5月10日-20日
子供の頃から大好きだったのに…
陸前高田市の広田半島から県道38号で大船渡市の末崎半島に入ると、半島南端の碁石岬に立った。岬突端の展望台からの眺めは絶景だ。広田半島の黒崎が対岸に見える。岬から岬を見るのはいいものだ。
ここで昼食にしたかったのだが、岬入口の食事処「岬」は休業中。岬の漁港は壊滅的にやられ、周囲の堤防も破壊されていた。その中にあって、手回しの簡易給油機で営業を再開したガソリンスタンドがあった。そこで満タンにしてもらう。
碁石岬近くの熊野神社にある日本一の大椿、樹齢1400年の「三面椿」は残った。大津波は神社の鳥居前まで押し寄せたが、神社も大椿同様、無事だった。あちこちで見てきた神仏の奇跡をここでも見る。
末崎半島から国道45号に出たところにある「つばき亭」で昼食にする。ここは宿泊も可。「刺身定食」(1200円)を食べた。
大船渡も死者・行方不明者500人以上を出す大きな被害を受けた。町中のほとんどの店が閉まっているので食材の確保はきっと大変なことだろう。
「つばき亭」の若奥さんは、
「海は子供の頃から大好きだったのに…。(そんな海が)今は大嫌いになってしまいましたよ」
といって顔を曇らせた。
その一言が胸に残った。
国道45号は高台を通っているので、国道45号沿いの大船渡は無傷で残った。
ところが国道45号から海沿いの県道230号に下っていくと、海岸一帯の大船渡は全滅状態。これが津波というものだ。高さのわずかな違いによって明暗が分かれる。1本の線を境にして無傷の世界と全滅の世界が隣り合っている。