第1回目(9)2011年5月10日-20日

何棟ものビルがひっくり返っていた

 牡鹿半島を一周すると、女川の町に入っていった。

 女川はまるで町全体が絨毯爆撃の空襲を受けたかのような惨状で、人気スポット「マリンパル」は廃墟と化し、女川駅や駅前の温泉施設「ゆぽっぽ」は跡形もない。町中の何棟ものビルは底を上に向けてひっくり返っていた。

 あまりにも強烈な津波パワー。

「うそだろ…」

 何か悪夢でも見ているようだ。

 目がさめれば、きっと、またいつものような女川の町並みが目の前に現われてくるような気がしてならなかった。

 女川からは「リアスブルーライン」の国道398号で、三陸のリアス式海岸を行く。

 尾浦漁港などを見てまわったが、どこも大津波に襲われ大きな被害を出している。

 雄勝に到着。ここでは公民館の屋上に大型バスが乗り上げていた。

 雄勝の町は全滅し、跡形もなく消え去っていた。

 あまりにもすさまじい大津波の威力。

「ふたごの湯」は営業中

 釜谷峠を越えると東北一の大河、北上川の流れが見えてくる。北上川の流域は、川を遡ってきた大津波に飲み込まれ、大きな被害を出した。

 川原には瓦礫の山ができている。

 瓦礫の山の後には、多数の生徒と先生たちが亡くなった大川小学校の残骸がポツンと残っている。ここは今回の「平成大津波」を象徴する悲劇の現場。小学校の建物内に入っていくと、2階の壁には先生方と全校生徒の集合写真が貼られていた。

 北上川をまたぐ新北上大橋は落橋し、国道398号は通行止。その先の志津川(南三陸町)方面には行けないので、修復中の北上川右岸の県道30号を通って国道45号に出た。

 国道4号の道の駅「上品の郷」でビッグボーイを止めたが、ここはいつも通りにやっていた。道の駅の温泉「ふたごの湯」も営業していた。

 大津波によるすさまじい被害を目の当たりにして、しばらくはビッグボーイの脇で座り込んでしまったが、いままでに経験したことのないようないようのな疲労感。気をとり直して「ふたごの湯」に入った。

「ふたごの湯」は混みあっていた。

 被災者のみなさんやボランティアのみなさんが大勢入っていた。

 苦みのある茶褐色の湯につかって生き返った。

 湯から上がると、新たな力が沸き上がってくるようで、新たな気分で三陸海岸に向かっていこうという気分になった。