アフリカ大陸最南端のアグラス岬へ！ 2003年〜2004年
我ら「アグラス軍団」はナミビアの首都ウイントフックを出発し、アフリカ大陸最南端のアグラス岬へ。
ナミビアでは灼熱のナミブ砂漠を越えた。はてしなくつづく砂丘地帯、一木一草もない土漠地帯を走り抜け、国境のオレンジ川を渡って南アフリカに入り、アグラス岬を目指した。
いかにもアフリカらしい話
2003年12月21日、我ら「アグラス軍団」の総勢11名のメンバーは、ナミビアの首都ウインとフックの国際空港に降り立った。強い日差しが照りつけていたが、標高1779メートルの高原の首都なので、それほどの暑さは感じない。
バスで市内の「ホテルサファリ」へ。そこの駐車場に我々の乗るバイクが用意されていた。なんともうれしいバイクとの対面。スズキのDR−Z400Sが6台、BMWのF650GSが5台、カワサキのKLR650が1台。全部で12台のバイクだ。そのうちの1台は南アフリカのヨハネスバーグからやってきたデュークが乗る。彼が我々を先導してくれる。
カソリの乗るバイクはDR−Z400S。「道祖神」の菊地優さんがサポートカーを運転し、それにはデュークの奥さんと生後1歳9ヵ月のトロイちゃんが乗っている。
「ホテルサファリ」で冷たいジュースを飲んだところで出発。荒野を貫く国道を走る。国道とはいっても制限速度は120キロだ。
第1夜目はカリビブ近くの農場内のキャンプ場に泊まった。夕食には農場主のハンズが仕留めた野生のオリックスの肉を焼いてくれた。
いかにもアフリカらしい話だが、つい先日、豹が農場の山羊を襲ったという。
「ウォ、ウォ、ウォー」
と、豹はそんな鳴き方をするという。
翌朝はハンズの運転する4駆に乗って農場内のサファリツアーをしたが、オリックスのほかに、さらに大きなエランドを見た。ともにカモシカ類になる。
ナミビアの首都ウイントフックに到着
ナミブ砂漠を南へ
ハンズの農場を後にし、カリビブの町へ。そこから待望のダートに突入。道幅は広く、路面は整備され、カーブもゆるやかなので、100キロ以上で走れる。モウモウと巻き上げる砂塵が長く尾を引いている。
あっというまに乾燥した風景に変わる。ナミブ砂漠に入ったのだ。
北はアンゴラ国境から南は南アフリカ国境まで、大西洋岸沿いに1300キロもつづくナミブ砂漠は南北に細長い砂漠。東西の幅は狭いところだと50キロ、広いところでも150キロぐらいでしかない。
強烈な日差しで、頭がクラクラしてくる。乾いた熱風をまともに受けて走るので、口びるが割れ、のどがひきつるように痛んでくる。なんとも厳しい砂漠の走行。ときたまの休憩ではバイクを木陰に停め、水をガブ飲みした。
カリビブから大西洋岸に向かっていく途中では、ダートを横切る4頭のキリンを見た。砂漠で見るキリンはなんとも異様な光景。ウエルウィッチアも見た。日本名は「奇想天外」。その名の通りの奇妙奇天烈な植物だ。
150キロのダートを走破し、大西洋岸のスワコップムンドに到着すると、天候が激変した。気温がガクッと下がり、一面の霧の中に突入。これは南極の方向から流れてくる寒流のベンゲラ海流の影響だ。
スワコップムンド近郊のキャンプ場に連泊し、1日かけて世界最大のアザラシの生息地として知られているケープ・クロスに行った。そこまでの道は塩で固めた高速ダート。DR−Z400Sのアクセル全開で走ったが、舗装路以上に快適に走れる。世界にはこんな道もある。ケープ・クロスの15万頭ものアザラシの大群を見たときは、我が目を疑った。世界にはこんな場所もあるのだ。
ケープ・クロスからスワコップムンドに戻るとナミブ砂漠を南下する。まずは35キロ南のウオルビスベイへ。その間では右手に大西洋、左手にナミブ砂漠の大砂丘群を見ながら舗装路を走る。赤い砂丘がウネウネとつづく風景は、目の底に強烈に焼きついた
ウオルビスベイからはナミブ砂漠のダートに入っていく。暑さが厳しい。極度の乾燥にやられ、のどの痛みがますますひどくなる。日本の冬の寒さから、いきなりナミブ砂漠の夏の暑さに変わり、体がついていかない。
「アグラス軍団」のメンバーは66歳の佐藤さんを筆頭に、61歳の島田さん、50代の竹口さん、藤田さんといるが、年配組のみなさん方はすこぶる元気だ。年配組の元気な姿に励まされ、「自分もがんばらなくては！」と自分自身を叱咤激励して走りつづけることができた。
ナミブ砂漠をさらに南へ。高速ダートを走りつづける。空には雲ひとつない。強烈な日差しが照りつけている。日が西の空に傾いた頃、ナミブ砂漠の砂丘地帯探訪の拠点、セスリアムに到着。ここのキャンプ場に泊まる。設備の整ったキャンプ場でトイレやシャワーが完備している。
夕日が落ちると、あっというまに気温が下がる。暗くなると満天の星空。火を起こし、焚き火を囲み、缶ビールで乾杯。我ら「アグラス軍団」は誰もがよく飲む。
「道祖神」の菊地さんがつくってくれた日本風カレーライスを食べたあとは、焚き火を囲んでの飲み会がまた始まる。これが楽しい！
翌朝、大砂丘群へ。朝日を浴びた砂丘の美しさに目を奪われた。陰影もはっきりしている。まさにナミブ砂漠のハイライトシーンだ。
セスリアムのキャンプ場には連泊したが、2日目の夜には6頭のジャッカルがやってきて、テントの周辺をウロウロとうろつきまわった。人間を襲うことはないと聞いていたが、あまり気持ちのいいもではない。
セスリアムからナミブ砂漠をさらに南へ。交通量のほとんどない高速ダートを走りつづける。単調な風景の中を走りつづけるので、猛烈な睡魔に襲われる。そんなときは砂深い路肩を走り、怖い思いをして眠気をとるのだった。
アメリカのグランドキャニオンに次ぐ世界第2の大峡谷といわれるフィッシュリバーキャニオンでは展望台に立ち、大峡谷を一望した。アイアイ温泉ではプールのような大きな湯船の湯にどっぷりつかった。
ナミビアと南アフリカの国境を流れるオレンジ川を渡って南アフリカに入り、ナミブ砂漠に別れを告げたが、ナミブ砂漠で走ったダート距離は1316キロになった。
ナミビアのダートに突入！
ケープワインで「乾杯！」
南アフリカの入国手続きは簡単に済み、いよいよアフリカ大陸最南端のアグラス岬を目指し、N7（国道7号）を南下していく。
2003年12月31日、クランウイリアム近郊のキャンプ場を午前8時に出発。シトルダールでN7から一部ダートのN303に入り、ミドルスバーグ峠、ジド峠、ミッシェル峠…と、いくつかの峠を越えた。南部アフリカでの「峠越え」だ。
すでにナミブ砂漠は遠くなり、森林地帯を走り抜けると、谷間には一面のブドウ畑が広がっていた。
ウースターの町からはグレートカルー、リトルカルーの丘陵地帯を豪快なアップ＆ダウンで一気に越え、午後4時、アフリカ大陸最南端のアグラス岬に到着。我ら「アグラス軍団」の面々はガッチリ握手をかわし、岬到着を喜び合った。
アグラス岬には「アフリカ大陸最南端」の碑が建っている。
それには「あなたは今、アフリカ大陸最南端の地に立っています」と英語とアフリカーンスで書かれている。
目の前の青い海に別に線が引かれている訳ではないが、ここで右手の大西洋と左手のインド洋の2つの大洋に分かれている。アグラス岬に立っていると、まるで地球を手玉にとっているかのような壮大な気分を味わえる。
その夜はアグラス岬に近いブレダースドープのキャンプ場に泊まった。「アグラス軍団」の面々は大晦日の町に繰り出し、レストランで盛大な宴会を開いた。特産のケープワインを何本もあけ、「乾杯！」を繰り返し、アグラス岬到着を祝った。
2004年の元日、ブレダースドープのキャンプ場で、初日の出を見る。一片の雲もない快晴の空に昇る朝日は神々しい。思わず朝日に向かって手を合わせた。
真夏のアフリカ大陸最南の地には正月気分もなかったが、我々は口々に「明けましておめでとうございます」と新年の挨拶をかわした。
アグラス岬から200キロ走ってケープタウンに到着。シンボルのテーブルマウンテンがひときわ目立つ。ケープタウンでは「マーランド・ゲストハウス」に泊まり、翌日、ケープ半島に入っていった。半島突端の喜望峰に立ったときは大感動。「喜望峰」の名前が何ともいいではないか。喜望峰に立つと、「さらなる世界へ！」と、限りない夢をかきたてられた。
ナミビアと南アフリイカの国境を流れるオレンジ川
