鵜ノ子岬→尻屋崎[002]

第1回目(1)2011年5月10日-20日

「鵜ノ子岬→尻屋崎」の始まり

 東日本大震災の発生から2ヵ月後の5月10日に、「鵜ノ子岬→尻屋崎」を開始する。東北太平洋岸最南端の鵜ノ子岬から東北太平洋岸最北端の塩屋崎まで走るのだ。

 神奈川県伊勢原市の自宅で昼食を食べ、キャンプ用具一式をリアに積んで、スズキの400ccバイク、DR−Z400Sのエンジン始動。

「頼むぞ、DRよ!」
 と、ひと声かけて走り出す。

 我が家を出る頃は晴れていた。それが東名で都内に入ると雨になった。

 東京・麹町の昭文社へ。約束通り16時ピッタリの到着。そこでの打ち合わせをすませ、みなさんの見送りを受け、17時30分、昭文社の玄関前を出発する。

 首都高から常磐道へ。雨はいったん止んでいたが、北に向かうにつれてまた降り出した。常磐道で関東から東北に入り、20時、いわき勿来ICに到着。

常磐道の三郷料金所を出発v
常磐道の三郷料金所を出発
いわき勿来ICに到着
いわき勿来ICに到着

 常磐道はここまでまったく問題なく走れた。巨大地震で路面がやられ、波打っているのではないかと想像したが、それは杞憂でしかなかった。

 夜の勿来(いわき市)の町を走る。ここでは大地震、大津波の影響はほとんど見られない。常磐線の勿来駅に行ってみると、いつも通りの勿来駅だ。

JR常磐線の勿来駅
JR常磐線の勿来駅

 勿来駅前から国道6号を南へ。国道沿いのコンビニで弁当を買い、東北と関東の境の鵜ノ子岬へ。岬北側の東北側が勿来漁港、岬南側の関東側が平潟漁港になっている。

 人影のまったくない勿来漁港の屋根の下にDRを停め、その脇で寝ることにする。シュラフのみ。屋根があるので、雨の心配をしなくてもいいのがありがたい。

 そこへ渡辺哲さんが来てくれた。うれしいことにカンビールと「バタピー」、「アーモンド&マカダミア」、「チーかま」を差し入れしてくれた。さっそく野宿宴会を開始。

 渡辺さんはノンアルコールだが、カソリは遠慮なくカンビールを飲ませてもらった。そして『ツーリングマップル東北』を見ながら、「渡辺情報」を仕入れる。渡辺さんの会社はいわき市内にあるが、休みの日には愛車のヤマハセローを走らせ、被災地の東北太平洋岸をまわっている。「渡辺情報」は正確で豊富だ。

 そんな渡辺さんは楢葉町に住んでいる。いや、住んでいたといった方がいい。楢葉町のみなさんは全員、東京電力福島第1原子力発電所の爆発事故で、強制的に移転させられてしまったからだ。

 大地震の被害を受け、大津波の被害を受け、それに追い討ちをかけるように原発事故の影響を受けた渡辺さんだが、そんな三重苦を吹き飛ばすかのように、いつも通りの元気さ、明るさだ。

 野宿宴会は夜中までつづいたが、渡辺さん差し入れのカンビールを飲みつくしたところでお開きになった。渡辺さんを見送ると、コンビニ弁当を食べ、シュラフにもぐり込む。渡辺さんには感謝、感謝だ。

夕食のコンビニ弁当を食べる
夕食のコンビニ弁当を食べる

「鵜ノ子岬→尻屋崎」は第1日目からすばらしい「東北人」との出会いがあり、さい先の良さを感じながら眠るのだった。