第1回目(3)2011年5月10日-20日
原発20キロ圏を迂回する
薄磯海岸北側の富神崎からは、海沿いの県道382号を行く。途中、通行止の区間はあったものの、かなり走れた。
県道382号の近くにある「かんぽの宿いわき」には、それほどの被害は出ていない。日帰り入浴は営業中。避難所にもなっているようだ。その近くでは大津波にもめげず、すでに田植えを終らせている水田があった。
四倉舞子温泉の「よこ川荘」はかなりの被害を受けたが、懸命に再建に向けた工事をしていた。
「できるだけ早く再開しますよ!」
というおかみさんの声には元気があった。
国道6号に出ると、温泉施設「いわき蟹洗温泉」は大きなダメージを受けて休業中。海岸のトンネルを抜け出た波立海岸はさらに大きなダメージ。「焼きはまぐり」の波立食堂は無残にも建物がつぶれていた。ほかの国道沿いの食堂も軒なみやられていた。
その中にあって波立薬師は無傷で残った。さらに驚いたことには、弁天橋でつながっている弁天島の岩の上に建つ赤い鳥居も無傷で残った。
波立海岸からは国道6号を北上。すぐ脇をJR常磐線が通っている。3キロほど行くと久之浜。ここには国道6号沿いに久ノ浜駅があるが、常磐線はここまでは動いている。久ノ浜駅から先は、爆発事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所の20キロ圏内に入ってしまうので止まったままだ。
国道6号を右折し、久之浜漁港まで行こうとしたが、相当大きな被害が出ているとのことで通行止になっていた。
国道6号を北上し、いわき市から広野町に入った。国道6号から海側の県道391号を行く。そこからは広野火力発電所の高い煙突が見える。東京電力でも最大級の火力発電所。1号機から5号機まであり、合計すると380万キロワットの発電量になるという。
ちなみに東京電力福島第1原子力発電所の1号機から6号機までの発電量は469万キロワット、東京電力福島第2原子力発電所の1号機から4号機までの発電量は440万キロワット。広野火力発電所はそれらの原発に匹敵するくらいの火力発電所なのだ。
広野火力発電所は今回の大震災のニュースにはあまり登場しなかったが、かなりの被害を受けた模様。それでも夏までには復旧できるとの情報もある。
県道391号をさらに行くと、広野町と楢葉町の町境に到着。そこからが東京電力福島第1原子力発電所の20キロ圏で、立入禁止になっている。通行止の交差点を左折すると、Jヴィレッジに入っていく。災害復興の自衛隊や警察、消防などの車両がJヴィレッジを埋めつくしていた。
国道6号を北に向かって走ると、広野町と楢葉町の境で通行止。国道6号の左側には道の駅「ならは」があるが、そこまで行くことはできないのだ。
行く手をはばまれ、最後にもう1本、県道35号を北上する。この道は国道6号の絶好の迂回路なのだが、県道35号も広野町と楢葉町の境で通行止だ。東京電力福島第1原子力発電所の「20キロ圏」というのは、このように浜通りを完全に分断してしまい、その南側から北側へ、北側から南側に行くのは大変なことだった。
東京電力福島第1原子力発電所爆発事故20キロ圏の大迂回作戦開始。最短路で20キロ圏の南側から北側に向かうのだ。
県道35号の広野・楢葉町境から南へ。広野町側を戻り、2キロほど走ったところで十字路を右折し、県道249号に入っていく。浅見川沿いの道。この県道249号は旧浅見川林道で、そのままダートに突入。国道399号に出ようとしたのだが、ダート突入地点で通行止。
それではと県道249号を戻り、次に五社山(685m)の南側を通る五社山林道に入っていく。五社山の登山口の駐車場を過ぎたところでダートに突入。2・9キロのダートを走り、県道247号と黒森林道との分岐点に出た。
旧三森林道の県道247号は「県道」とは名ばかりで、かなりハードなダートコース。3本の林道がぶつかる分岐点を右へ、黒森林道に入っていく。植林地帯の樹林の中を走り抜け、さきほどの県道249号(旧浅見川林道)との分岐点を通り、国道399号の名無し峠に出た。ここから東京電力福島第一原子力発電所を中心とする20キロ圏の北側に出るのには、まだまだ大変な道のりなのだ。