2011年6月1日

台湾往復縦断のゴール

 台北近郊の町、新荘に入ると、中心街にあるスズキの販売店「金力盛車業行」を訪問。店のアド・ネオンは「歓迎・鉄人賀曽利隆」を流している。

 社長には大歓迎され、新荘の老舗店のアップルパイなどたくさんの贈物をいただいた。

 社長には4人の息子さんがいるとのことで、そのうちの3人と一緒にバイク店を幅広くやっている。台湾ではどこでも感じることだが、家族の結びつきがきわめて強い。3人の息子のうち2人は結婚していて奥さんともども来てくれた。そんな3人の息子さんたちとの記念撮影。販売店を離れるときは「みなさんに幸多かれ!」と祈りたくなるような気持ちになる。台湾の「家族愛」には心を打たれるものがある。

 新荘からは2人のライダーが同行したいという。

「どうぞ、どうぞ!」

 次の目的地、新北に向かって走る。

 その途中では天気が崩れ、ザーッと雨が降ってきた。雨に慣れている台湾人ライダーのみなさんは次々にスクーターを路肩に停め、すばやく雨具を着て、何事もなかったかのようにまた雨の中を走り出す。さすが。雨にはまったく動じない。

 ぼくもすばやく雨具を着たが、同行の2人のライダーのうち1人は雨具を着るそぶりもみせず、ビショビショに濡れたTシャツ1枚で走りつづける。

 新北のスズキの販売店「東明車業」に到着。店内でマンゴーやライチなどの亜熱帯の果物をいただきながら社長夫妻、息子さんと話した。社長夫妻からは「KASORI」と彫り刻まれた皮製の腕輪をプレゼントされた。ありがとうございます!

 新北を出発。TEKKENを走らせ、板橋駅前を通って台北市内に入っていく。台北市内では3軒のスズキの販売店を訪問した。

 最初の「蘭帝輪業」では社長夫妻の出迎えを受け、店内で果物や菓子をいただきながら歓談。社長夫妻からは「高山茶」をプレゼントされた。

 2番目のスズキの販売店には大勢のみなさんが集まっていた。大半が若者だ。台鈴の李さんから抽選で鯉のぼりが贈られた。そのあとみなさんたちと「行くぞー!」のカソリポーズ。ここではTEKKENを買いに来た若者に頼まれ、銀のサインペンでフロントフェンダーに「生涯旅人! 賀曽利隆」のサインをしてあげた。彼が喜んでくれたことがすごくうれしい。

 3番目のスズキの販売店は「易昌機車行」。ここにも大勢のみなさんがスクーターに乗って駆けつけてくれた。やはり抽選で鯉のぼりが贈られ、記念撮影のあと、みなさんたち1人1人と握手をかわした。「易昌機車行」を最後に台北市内のスズキの販売店めぐりを終えたが、台湾の若きライダーたちとの出会いはいつまでも心に残った。

 台北市内のスズキの販売店、3軒の訪問を終えると、台北の中心街へ。蒋介石を記念した中正紀念堂前の自由広場でTEKKENを停めた。ここが「台北〜高雄」の台湾往復縦断のゴール。TEKKENは1150キロをノントラブルで走ってくれた。

 瑠璃瓦と大理石の中正紀念堂は青と白のコントラストが色鮮やか。高さは70メートル。89段の階段は89歳(享年)で死去した蒋介石の年齢と同数だという。

 中正紀念堂を出発し、松江路の台鈴本社前へ。ついに戻ってきた!

 本社前でTEKKENを停めると、フロントフェンダーに、「台湾長征! 1150km 2011・6・1 賀曽利隆 TEKKENよ、ありがとう!!!」と銀色のサインペンで書き込んだ。TEKKEN(鉄拳)は、ほんとうによく走ってくれた。