[1973年 – 1974年]
サハラ砂漠縦断編 6 アアイウン[スペイン領サハラ] → カサブランカ[モロッコ]
町全体が要塞のアアイウン
スペイン領サハラのアアイウンは、町全体が要塞といった感じだ。モロッコとの国境が風雲急を告げているので、戦力を急速に増大させていた。新しい兵舎があちこちに続々と建てられ、軍用車が町中を頻繁に走りまわっていた。
アアイウンの町を歩く。そしてまた歩く。自分の足で町をひとまわりした。
日が暮れると、急速に気温が下がり、ヒンヤリとしてくる。砂漠気候の影響のほかに、大西洋の寒流も影響しているようだ。
寒さに震えながら、白い教会前のベンチで寝る。寒いのに蚊にやられた…。
緊迫の国境越え
1974年9月13日、アアイウンを出発。ヒッチハイクでモロッコとの国境を目指す。軍用トラックや戦車部隊が続々と北の国境方面に向かっていく。演習なのか、ドーン、ドーンと大砲の音が聞こえてくる。空には何機ものジェット戦闘機の銀翼が光っている。開戦間近を思わせる光景だった。
アアイウンから国境までは80キロほど。その間は舗装路だ。途中、2ヵ所に検問所があったが、ピーンと張り詰めた緊張感が漂っていた。
夕方、国境に着いた。
スペイン領サハラ側で出国手続きをし、モロッコ領内に徒歩で入っていく。バラックが何棟か、建っている。我慢できないほどの冷たい風が吹いている。
スペイン領サハラの車はモロッコに入れない。モロッコの車はスペイン領サハラには入れない。そのため両国間の物の流れは、ここ、国境の砂漠地帯で物の受け渡しをするようになっていた。
戦争同然の状況下でも、両国間の交易はしっかりとおこなわれていた。
サハラ砂漠を抜け出た!
入国手続きのないまま、モロッコに入っていく。
荷物を積み込んでいる最中の3台のトラックに頼むと、幸運にも乗せてもらえた。モロッコ側のサハラの玄関口、タンタンまで行くトラックだった。
積み込みが終ると、荷台の、うず高く積まれた荷物のてっぺんに登る。
やがて3台のトラックは動き出す。一望千里のサハラの眺め。自分の心の中まで雄大な風景になっていく。
砂深い道がつづく。トラックは砂にめりこみながら走った。
小さな砂丘が連続する砂丘地帯。その中をトラックは縫うように走り、北へ北へと進んでいった。
最後の難関はズボズボの砂道。そこでは何度もスタックしたが、そのたびにシャベルで砂をかき、サンドマットを使って砂地獄を脱出した。
砂丘群が後に去ると、道は固くなった。砂がずいぶんと少なくなった。その夜、タンタンについた。ついにサハラ砂漠を抜け出たのだ。
タンタンからは舗装道路になる。グルミン、アガディール、エサウェラ、マラケシュと通り、モロッコ最大の都市、カサブランカに到着した。]