1978年10月14日 – 16日
能登半島地震後の能登半島の現状をみなさんに見てもらったが、ここからは「日本一周」で見た能登半島をお伝えしよう。「30代編日本一周」(1978年)を皮切りに40代編、50代編、60代編、70代編と10年ごとにバイクを走らせて「日本一周」をしている。能登半島は日本一周の重要な舞台なのである。
まずは「30代編日本一周」(1978年)だ。バイクはスズキのハスラー50(空冷)。新潟県の糸魚川から能登半島に向かった。
30代編日本一周
1978年10月14日、糸魚川を出発。国道8号で親不知、子不知の難所を走り抜け、境川を渡って富山県に入った。十六夜の大きな月が山の端に登る。
20時、富山着。富山駅の待合室でひと休みしたあと、ナイトランで能登半島に向かう。雨晴海岸の松太枝浜でハスラー50を止めて野宿。シュラフのみの野宿なので寒さに震えた。
翌朝は5時に起きる。富山湾は夜明けの空を映し、ほのかに明るい。シュラフは夜露でグッショリ濡れている。
氷見の町を走り抜け、国道160号で富山県から石川県に入った。
国道160号の富山・石川県境
七尾からは国道249号で穴水を通り、珠洲へ。そこでは見附島を見た。弘法大師ゆかりの島で、通称軍艦島。その名の通り、軍艦のような形をしている。
珠洲から国道249号で大谷峠まで行き、そこから「峠返し」で珠洲の町まで戻ると、今度は海沿いの道で狼煙(のろし)まで行く。
昼過ぎには狼煙に到着。能登半島の先端の禄剛崎に通じる狭い道の両側には、みやげもの屋が並ぶ。坂を登りつめたところが岬。岬の先端には白い灯台。禄剛崎ではしばらく日本海の大海原を眺めていた。
ここでは1年がかりで自転車で日本一周している青年に出会った。日本一周同志、気が合い、禄剛崎から下った浜で飯を炊き、昼食をともにした。昼飯を食べながら、お互いの旅の話をした。
国鉄七尾線の列車とすれ違う
子供たちの遊ぶ姿をあちこちで見る。穴水で
宇出津の町
恋路海岸の弁天島
珠洲の見附島(軍艦島)
にぎやかな珠洲の中心街
内浦の漁村の風景
狼煙漁港
狼煙の家並み
禄剛崎の土産物店
禄剛崎の灯台
チャリンコ氏とは一緒に行くことにした。自転車が先を行き、ハスラー50がその後について走る。ギアを2速まで落とし、トコトコ走るのだが、それでもすぐに自転車に追いついてしまう。
奥能登の海沿いの道はアップダウンが激しく、自転車は登り坂にさしかかると、ガクッとスピードが落ちる。必死にになってペダルをこぐチャリンコ氏の姿を後ろから見ていると、気の毒になってしまう。
国道249号に合流し、大谷を過ぎた長橋では秋祭りの最中。キリコと呼ばれる京風の山車が2台出ていた。
我々は祭りを見物することにした。チャリンコ氏は店で能登の地酒を買うと、道端に座り込んで冷酒を飲み始める。日暮れになると、近所のおばさんが盆にお赤飯とサトイモ、シイタケコンニャクの煮物を持ってきてくれた。
「いや〜、おいしい!」
おばさんにお礼を言って、祭りのご馳走をありがたくいただいた。
風が強くなり、そのうちに雨が降り出し、雨中の祭りになってしまった。
我々は屋根付きのバス停を一夜の宿にした。窓にはガラスが入っていないので、雨が激しく吹き込んでくる。バス停の前には露店が2軒出ていた。
土砂降りの雨の中、10時になると2台の山車は神社に向かって動き出した。それにともなって太鼓の音、鉦の音が雨中に響いた。
外浦では冬に備えて間垣をつくっている
長橋の集落では秋祭りを見る
祭りの山車に乗って喜ぶ長橋の子供たち
翌朝、バス停でチャリンコ氏と別れ、輪島に向かった。雨は上がったが、恐ろしく風が強い。日本海は荒れ、白い波頭があちこちに見える。曽々木海岸の切り立った断崖には次から次へと大波が打ち寄せている。
白米の千枚田を通り、漆器で有名な輪島には7時に着いた。輪島駅に行き、顔を洗ってさっぱりしたあと、待合室で日記を書いた。そのあと漁港に行き、輪島名物の朝市を歩いた。地元のおばさんたちが鮮魚や乾物、野菜、果物などを売っている。地元の人たちに混じって、カメラをぶらさげた観光客も見られた。
輪島からは海沿いの道を行き、大沢という集落では間垣づくりを見る。間垣は季節風から集落を守る垣だ。
日本海の海岸を離れて山中に入り、国道249号に合流する。門前町(現輪島市)から富来町(現志賀町)に入ったところで海沿いの道を行き、能登金剛の荒々しい海岸美を見てまわる。
志賀からは国道249号で羽咋、津幡を通って金沢へ。いまにもザーッと降られそうな天気だったが、ラッキーなことに雨を追っていくような感じで、とうとう金沢まで降られずにすんだ。何か、すごく得した気分になった。
曽々木海岸を行く。海は大荒れ
輪島漁港
輪島漁港の魚市場
輪島の朝市
輪島朝市のにぎわい
外浦の海を見ながら大沢へ
大沢での間垣づくりを見る
One Thought on “能登半島を行く[32]”
コメントは受け付けていません。