カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

『地平線通信』(第25回目)(2011年5月号より)

投稿日:2021年3月6日

「東日本大震災特別地平線会議報告会」2011年4月23日

●「東日本大震災特別地平線会議報告会」は、すごかったですね。何がすごいかって、「節電自粛」の影響で午後2時という開始時間にもかかわらず、会場は満員になりました。ほんとうに驚きました。平日の午後2時なので、来てくださる方はパラパラ程度であろうと予想していたものですから。会場を包み込む熱気には圧倒されてしまいました。地平線会議の歴史に新たな1ページが加わった、そんな気がしました。●さて報告会ですが、私、カソリの「何で東北なの?」がオープニング。第1部の渡辺哲さん(福島県楢葉町)は大地震、大津波、原発事故のトリプルパンチ。避難所での様子は何とも生々しいものでした。つづいて相沢さん父子(宮城県名取市)。大津波前の自宅の写真と、すべてが流されてしまった大津波後の写真の対比はあまりの衝撃的で、言葉を失うほどでした。お父さんらが避難所で、「寝ないように!」と、みなさんで励ましあったという話には感動しました。同じ3月に襲った1933年の昭和三陸大津波では、津波で助かったものの、その後、多くの人たちが凍死したという話を聞いていたからです。●第2部のリレートークはまさに「地平線会議」の面目躍如といったところでした。トップバッターの登山家・谷口けいさんのお話で強く印象に残ったのは自衛隊の救援活動のすごさです。指揮系統がきわだっていたようです。この大震災の第1報を海外で聞いたというのも谷口さんらしいと思いました。つづいての滝野沢優子(福島県天栄村)さんは、いかにも滝野沢さんらしいというか、まさに犬猫大好き人間の発想でした。「県外のボランティアの人たちが被災地の犬猫を助けているのに、地元の私が…」という思いで「犬猫みなしご救援隊」の活動をしているとのことです。被災地に置き去りにされて餓死した犬の写真はショッキングでした。「そうか、今回の大震災ではこのような被害の一面もあったのか」と思い知らされました。●第3部の「RQのやってきたこと」は、広瀬敏雄さんと佐々木豊志さんの対談形式。広瀬さんの「RQはレースクイーンではなくレスキュー!」には会場から小さな笑い声が。沖縄の「地平線会議in浜比嘉島」では元気溌剌とした表情を見せてくれた広瀬さんでしたが、今回は憔悴したような表情が垣間見られました。想像を絶する今回の大震災でのボランティア活動の大変さが、広瀬さんのお顔からうかがい知ることができました。会議を中断して会場に駆けつけてくれた広瀬さんと佐々木さんが退席したあとは、第2部のリレートークのつづきです。RQ活動真っ最中の新垣亜美さん、「浜のかあさん応援団」の安藤安紀子さんが、それぞれの現状を報告してくれました。午後2時から午後6時までと、4時間もの拡大版の報告会でしたが、気がついてみるとあっという間に終っていました。それほど中身の濃いお話の連続でした。すごいぞ、地平線会議。●ぼくは今回の報告会で、みなさん方からすごいエネルギーとパワーをもらったような気がします。その力でもって、大震災から2ヵ月後の5月11日に、バイクで東北に出かけます。福島から青森までの東北・太平洋側を走ってきます。東北の入口というのは、はっきりとしています。それは茨城・福島県境の鵜ノ子岬。海に落ち込む断崖の関東側が平潟漁港で、東北側が勿来漁港になります。その鵜ノ子岬から旅を始めようと思っています。原発事故での立ち入り禁止区域や通行止区間は、そのたびに頭をひねって迂回していきます。旅の最後は下北半島北東端の尻屋崎。そこには「本州最涯地」の碑が建っています。その途中では本州最東端、岩手県重茂(おもえ)半島のトドヶ崎にも立ち寄ろうと思っています。行ければの話ですが。岬への入口が姉吉漁港。今回の大津波で38・9メートルという波高を記録したところです。●今回の東北ツーリングでは被災地の被害を見るだけではなく、現在、国道6号はこんな状態ですよ、国道45号はこんな状態ですよ、日本三景の松島は大丈夫ですよ、宮古の浄土ヶ浜には行けますよ、鵜ノ巣断崖から眺める「海のアルプス」の風景はまったく変りませんよ…といったツーリング情報を流し、1人でも多くのライダーに東北の太平洋岸を走ってもらいたいのです。●カソリと東北のかかわりは、多くのツーリングライダーのみなさんが使ってもらっている『ツーリングマップル東北』(昭文社)にあります。1997年に誕生したのですが、その2年前から現在まで、毎年、1ヵ月1万キロを目安に実走取材で東北各地を駆けめぐっています。15年間で15万キロ走りました。東北の全市町村に足を踏み入れていると自負しています。103見開きページからなるものですが、「地図に個性を!」を合言葉に、全部で数千のコメントが入っています。その大半は実際にその地に行き、自分の目で見、自分の耳で聞き、自分の舌で味わったものを書き込んでいます。「みちのくのカソリ」とか「みちのくライダーカソリ」などと呼ばれています。●それだけに今回の大震災と大津波によるあまりの惨状は目を覆うばかりで、泣きたくなるほどです。3月11日以来、「なんで、なんで…」が自分の口ぐせのようになってしまいましたが、もう「なんで…」とは言っていられません。自分なりに東北に一番、恩返しできること、それは東北の今の情報を発信をすることだ思っています。それでは東北に行ってきます。(賀曽利隆)

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    https://ameblo.jp/hokkaider/entry-10852098083.html

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    19年間で140ヵ国、39万㎞を走った松尾さんの地球ひとり旅。その第1弾目として「アフリカ編」が出た。松尾さんのパワーには圧倒されるが、旅への情熱がけた外れに大きい。JRを早期退職して56歳で世界に旅立った松尾さん。「アフリカ編」のあとは、
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    御年77歳の海外ツーリングライダー、松尾さんの初めての著書。英語もほとんど話せず、ガイドブックも持たず、地図は高校の授業で使う世界地図帳だけ。まさに行き当たりばったりの旅ながら、何とかなってしまうのだから凄い。私もインド・バラナシでお会いしましたが、ホントに日本語とジェスチャーだけでも通じていました。海外ツーリングを夢見る、すべてのライダーに勇気を与えてくれる本です。

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    文:中部博 写真:武田大祐
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    (賀曽利隆)

    360ページ
    出版社:ラピュータ
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