カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

温泉めぐり日本一周[138日目]

投稿日:2018年8月29日

「ここは女湯よ」

九州編 9日目(2007年4月28日)

 立久恵峡温泉「御所覧場」の朝湯に入る。まずは館内の洞窟風呂風の内風呂に入り、次に宿の前を通る国道184号を渡ったところにある露天風呂に入った。露天風呂は「絶景湯」。湯につかりながら立久恵峡の垂直にそそりたつ岸壁を眺める。目の前を神戸川が流れている。額縁に入った一幅の絵を見ているかのような気分になった。

 湯から上がるとご飯、しじみの味噌汁、干物、フキの煮物、温泉卵、サラダ、海苔、漬物の朝食を食べた。

 9時、立久恵峡温泉「御所覧場」を出発。国道184号で出雲市へ。JR山陰本線の出雲市駅前でスズキBandit250Sを止めた。カンコーヒーを飲み干したところで出雲の温泉めぐりを開始する。

 第1湯目は山中の一軒宿のみとや深谷温泉「ふかたに荘」。ここは山中の一軒宿。庭先では水車が回っている。温泉は内風呂のみ。湯につかっていると、次々にやってくる地元のみなさんに声をかけられる。

「単車で旅しているのですか」

「気持ちいいでしょ」

「どこから来たのですか」

「これからどこへ行くのですか」
などなど。

 湯から上がると、みなさんが持ち寄った漬物を一緒になっていただいた。お茶を飲みながら漬物を食べていると、みなさんとの会話はいつはてるともなくつづく。「ふかたに荘」にはあたたかな空気が流れていた。

 第2湯目は頓原温泉の日帰り湯「リフレッシュセンター」。内風呂のみで、黄土色の湯はラムネの味がする。ここは全国でも有数の炭酸泉で、地元のみなさんは「ラムネ泉」と呼んでいる。湯の色は日によって濃くなったり、薄くなったりするという。

「このラムネ泉はほんとうに湯冷めしないのよ」
 と、湯上りのおばちゃんはいっていた。

 ここまでが出雲の温泉だ。

 島根・広島県境の赤名峠の「峠返し」で折り返し、次に石見の三瓶山周辺の温泉をめぐる。

 国道375号を行く。中国一の大河、江の川沿いのルートだ。

 第4湯目は潮温泉「大和荘」の湯。内風呂のみ。草色がかった湯の色。湯の色は薄いが、かなり濃い味がする。父親が子供と一緒に入っていた。ここの湯はアトピーに効くと聞いてやってきたのだという。子供はアトピーだった。

「何とかしてあげたい」
 という親心がひしひしと伝わってくる。

 第5湯目は千原温泉。山中の一軒宿「千原温泉湯治場」の湯に入る。ここは究極の「湯治湯」といったところ。方形の石造りの湯船は小さめ。湯船のふちにはびっしりと温泉の成分がこびりつき、特有の紋様を描いている。温めの湯で、それでいて体の芯からホワ〜ンとしてくる。何といったらいいのだろうか、オンドルの暖かさに似ている。黄土色の湯で、湯の味も濃い。湯船の底からはボコボコッ、ボコボコッと湯が湧き出てくる。「自然湧出」の自噴の湯。長湯していると、思わず「効く〜!」と声が出てしまう。おそらく2時間でも3時間でも入っていられるだろうが、館内には「入浴時間は1時間以内でお願いします」の貼紙があった。

 第6湯目はユートピアおおち温泉「ゴールデンユートピアおおち」の湯。ここは内風呂のみで、無色透明無味無臭の湯。

 第7湯目は湯抱温泉。国道375号沿いにある温泉宿「湯抱荘」の湯に入った。「男湯」に入ろうとしたとき、脱衣所にいた下着姿の中年女性に、
「ここは女湯よ」
 と、かなりきつい口調でいわれた。

 あわてて飛び出し、もう一度確認すると、暖簾には「殿方」と書いてある。

 もう一度、中に入り、すでに服を着終わっていた中年女性に、
「あのー、やっぱりここは男湯のようですが…」
 と恐る恐るいった。

 すると中年女性は間違えて男湯に入ったことに気づき、湯上りの上気した顔をさらに赤くし、「ごめんなさいね」といって逃げるようにして出ていった。その顔がかわいらしい!

「おしかったな」

 もう2、3分、早ければ…。

 ここの湯はいい。内風呂のみで色の濃い赤湯。「神湯」といわれているが、その名前どおりの体に効きそうな湯。湯の味はそれほどしない。

 第8湯目は池田温泉の一軒宿、「池田ラジウム鉱泉」の湯。木のふたをとって、小さな湯船につかる。淡い草色をした湯。猛烈に濃い湯の味。温泉のミネラル分が口の中でからみつきそう。これほど濃い味の湯というのもそうはない。

 残念だったのは、小屋原温泉「熊谷旅館」。すでに日帰り入浴の時間が過ぎていて入れなかった。

 第9湯目は三瓶温泉「さんべ荘」。ここは三瓶山の裾野にある国民宿舎。三瓶山の周辺には東西南北に温泉があるが、ここは南麓になる。大浴場と露天風呂の湯につかった。三瓶山周辺の温泉はどこも個性派ぞろいだ。

 そんな三瓶山を間近にする三瓶温泉の温泉ホテル「さひめ野」に泊まった。飛び込みで行った宿で、なおかつ到着が20時20分という時間にもかかわらず、夕食を用意してくれるという。

 さっそく湯に入る。ここは「さんべ荘」と同じ三瓶温泉なので、カウントはしない。湯から上がり、21時過ぎになって、「夕食ができましたよ」と呼びにくる。

 レストランでの夕食。もううれしくなって生ビールを何杯もおかわりしながら刺身や牛鍋、天ぷら、焼き魚、茶碗蒸し…の豪華版の夕食を食べた。

 天ぷらは揚げたての熱々、焼き魚も焼きたてのを持ってきてくれた。最後に名物「三瓶そば」をすすって夕食を終えたが、なんとも満ちたりた気分。そのあとでもう一度、今度はゆったり、まったりと大浴場の湯につかるのだった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 立久恵峡温泉「御所覧場」
朝食 立久恵峡温泉「御所覧場」 ご飯、しじみの味噌汁、干物、フキの煮物、温泉卵、サラダ、海苔、漬物
9時 立久恵峡温泉「御所覧場」を出発
1291湯目 みとや深谷温泉「ふかたに荘」(300円)
1292湯目 頓原温泉「リフレッシュセンター」(300円)
1293湯目 加田の湯温泉「加田の湯」(400円)
昼食 加田の湯温泉「加田の湯」 ごんべい定食(1000円)
1294湯目 潮温泉「大和荘」(315円)
1295湯目 千原温泉「千原温泉浴場」(500円)
1296湯目 ユートピアおおち温泉「ゴールデンユートピアおおち」(400円)
1297湯目 湯抱温泉「湯抱荘」(400円)
1298湯目 池田温泉「池田ラジウム鉱泉」(500円)
小屋原温泉(時間外)
1299湯目 三瓶温泉「さんべ荘」(500円)
20時20分 三瓶温泉「さひめ野」(11700円)
夕食 宿食
本日の走行距離数 185キロ
本日の温泉入浴数 9湯

立久恵峡温泉「御所覧場」の露天風呂「御所覧場」の露天風呂から見る立久恵峡「御所覧場」の朝食

立久恵峡温泉「御所覧場」の露天風呂 「御所覧場」の露天風呂から見る立久恵峡 「御所覧場」の朝食

「御所覧場」を出発みとや深谷温泉「ふかたに荘」「ふかたに荘」の湯

「御所覧場」を出発 みとや深谷温泉「ふかたに荘」 「ふかたに荘」の湯

加田の湯温泉「加田の湯」「加田の湯」の湯「加田の湯」の「ごんべい定食」

加田の湯温泉「加田の湯」 「加田の湯」の湯 「加田の湯」の「ごんべい定食」

国道54号の赤名峠潮温泉「大和荘」江の川沿いに走る

国道54号の赤名峠 潮温泉「大和荘」 江の川沿いに走る

千原温泉「千原温泉浴場」ユートピアおおち温泉「ゴールデンユートピアおおち」湯抱温泉「湯抱荘」

千原温泉「千原温泉浴場」 ユートピアおおち温泉「ゴールデンユートピアおおち」 湯抱温泉「湯抱荘」

「湯抱荘」の湯三瓶山の山麓を行く池田温泉「池田ラジウム鉱泉」

「湯抱荘」の湯 三瓶山の山麓を行く 池田温泉「池田ラジウム鉱泉」

小屋原温泉「熊谷旅館」の湯には入れず三瓶温泉「さんべ荘」三瓶温泉「さひめ野」の夕食

小屋原温泉「熊谷旅館」の湯には入れず 三瓶温泉「さんべ荘」 三瓶温泉「さひめ野」の夕食

「さひめ野」の大浴場

「さひめ野」の大浴場    

Comments

Comments are closed.

Scroll Up