カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

奥の細道紀行[81]

投稿日:2017年1月5日

浅井長政一家の像にジーン

滋賀県長浜市/2009年

 北国街道の木之本宿では木之本地蔵を参拝。そしていよいよ「奥の細道むすびの地」の大垣へと向かっていく。「奥の細道紀行」も最後の行程だ。古い家並みのつづく木之本宿を行くとT字路にぶつかるが、そこが北国街道と北国脇往還の追分。

「右 京・いせ道 左 江戸・なごや道」
 と彫られた石の道標が立っている。右が北国街道で左が北国脇街道になる。北国街道は長浜宿を通り、鳥居本宿で中山道に合流、北国脇往還は春照(すいじょう)宿を通り、関ヶ原宿で中山道に合流する。

 芭蕉は木之本宿から北国脇往還で大垣に向かった。北国脇往還には伊部宿、春照宿、藤川宿の3宿があり、芭蕉はそのうちの春照宿で泊まったようだ。

 カソリは相棒のスズキST250を走らせ、木之本宿から北国脇往還の国道365号を行く。伊吹山の山麓の道。高月では渡岸寺に参拝。観音堂の十一面観音は国宝だ。

 伊部宿からは浅井氏の小谷城跡へ。バイクで行けるところまで行き、その先は山道を歩いた。といってもここにはきれいさっぱりと何も残っていないが…。展望の開けた所からは湖北の平野と琵琶湖に浮かぶ竹生島が見えた。

 小谷城は克政、久政、長政の浅井氏3代の城。小谷山(494m)の全域に築かれた日本でも屈指の山城で、「日本五大山城」に数えられている。

 そのような小谷城は織田信長軍の激しい攻撃によって天正元年(1573年)9月1日に落城し、浅井氏は滅亡した。

 小谷城跡に近い国道沿いには浅井長政一家の像が建っている。長政と妻のお市の方(織田信長の妹)、3人の娘、それと長男だ。

 小谷城の落城後、3人の娘たちは生き延び、後世の歴史にその名を残した。

 長女の茶々は豊臣秀吉の側室になり、その後、淀君として豊臣家に君臨した。

 次女の初子は大津城主の京極高次に嫁いだ。

 三女の達子(江)は徳川2代目将軍秀忠の夫人になり、3代目将軍の家光を産んだ。

 長男の万福丸はその後、捕らえられ、関ヶ原で磔の刑に処された。享年10歳だった。

 バイクを停め、浅井長政一家の像を見ていると、胸にジーンと来るものがある。これが歴史の悲しみというものか。芭蕉もきっと滅亡した浅井一族を思ってこの地を通り過ぎたことだろう。

 本陣跡の残る春照宿では「伊吹山文化資料館」を見学する。民俗資料を展示しているが、ぼくの目を引いたのは「日本武尊」紹介のパネル。伊吹山は日本武尊伝説の地で、春照宿には日本武尊の像が建っている。「伊吹山文化資料館」の日本武尊紹介のパネルには、『古事記』と『日本書紀』に出てくる日本武尊の足跡が点線と実線で日本地図に記され、次のようにこの地での日本武尊の最後が書かれている。

 尾張の熱田(あつた)に住む美夜受比売(みやずひめ)と結婚したミコトは伊吹山の荒ぶる神のことを聞き、草那芸剣(くさなぎのつるぎ)を比売に預けて出発しました。伊吹山に着くと道に白い大猪が横たわっていて、「これは山の神の使いだろう、帰りに殺してやろう」といって山に登りました。ところが大猪は山の神でした。にわかに雲霧がおこり、氷雨が降ってミコトを打ち惑わせました。山を下り、居醒の清水で休み、伊勢にたどり着くころ国偲びの歌を詠んで息絶え、白鳥となり大和の国をめざして飛んでいきました。

 ぼくはいつの日か、「日本武尊」の道をたどってみたいと思っている。

 春照宿を出発し、藤川宿を過ぎたところで滋賀・岐阜の県境を越え、岐阜県に入った。旧国でいうと近江から美濃に入ったのだ。美濃は「奥の細道」最後の国になる。

木之本宿の木之本地蔵

▲木之本宿の木之本地蔵

木之本宿の追分の旧家

▲木之本宿の追分の旧家

木之本宿の追分の道標

▲木之本宿の追分の道標

高月の渡岸寺

▲高月の渡岸寺

伊吹山を見ながら南へ

▲伊吹山を見ながら南へ

小谷城跡の案内板

▲小谷城跡の案内板

小谷城跡からの眺め

▲小谷城跡からの眺め

浅井長政一家の像

▲浅井長政一家の像

春照宿の町並み

▲春照宿の町並み

春照宿の本陣跡

▲春照宿の本陣跡

春照宿の北国脇往還の道標

▲春照宿の北国脇往還の道標

春照宿の日本武尊像

▲春照宿の日本武尊像

春照宿の「伊吹山文化資料館」

▲春照宿の「伊吹山文化資料館」

春照宿の「伊吹山文化資料館」の内部

▲春照宿の「伊吹山文化資料館」の内部

春照宿の芭蕉句碑

▲春照宿の芭蕉句碑

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