カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

奥の細道紀行[12]

投稿日:2016年8月7日

白河の関を越える

福島県白河市/2009年

 さー、「奥の細道」の「奥州編」、開始だ。

 古代東山道の栃木・福島県境の峠、明神峠を白河方向へと下っていく。現在の県道76号である。

 明神峠から3キロほどで「白河関跡」に到着。ここは太平洋側の勿来、日本海側の念珠と並ぶ「奥羽三関」のひとつ。古代日本の北方警備の最前線だった。今ではそこに白河神社がまつられている。白河藩主、松平定信の「古関蹟」もある。定信が「この場所こそ、白河の関があったところですよ」と、お墨つきを与えた碑、それが「古関蹟」だ。

「奥の細道」でも白河関はきわめて重要なポイント。芭蕉は白河の関を越えて、旅への気持ちを新たにした。白河関跡には「芭蕉碑」があるが、それには『おくのほそ道』の「白河の関」の項が記されている。

 心もとなき日数を重ねるままに、白河の関にかかりて旅心定まりぬ。『いかで都ヘ』と便り求めしもことわり。中にもこの関は三関の一にして、風騒の人、心をとどむ。秋風を耳に残し、紅葉を俤にして、青葉の梢なほあわれなり。卯の花の白妙に、茨の花咲き添えて、雪にも越ゆる心地ぞする。古人冠を正し衣装を改めしことなど、清輔の筆にもとどめ置かれしとぞ。

  卯の花を かざしに関の 晴れ着かな  曽良

『おくのほそ道』

「白河関址」前の「やたべ」で昼食。「手打ち中華」を食べた。縮れ系の幅広麺にはしっかりとした腰がある。ちょっと不ぞろいなのがまた好ましい。醤油味のさっぱり系スープ。2枚のチャーシューがなかなかの味わいだ。

「白河関址」を過ぎるとすぐに旗宿の集落。ここは東山道時代の宿駅。芭蕉は奥州街道の白沢宿から旗宿に来て、ひと晩、泊まっている。

 旗宿からは県道280号を行ったが、県道沿いの郵便局は「古関郵便局」だし、「和泉式部庵跡」などもあって、「さすが古道!」と思わせるものがあった。

 国道289号に出ると、南湖公園に寄っていく。ここは日本最古の公園。享和元年(1801年)、白河藩主の松平定信によってつくられた。

 湖畔の「萩原屋」で名物の「南湖だんご」を食べる。あん、みたらし、ごまの「三色だんご」。そのあと湖畔を散策し、日本庭園の「翠楽園」をひとまわりした。「翠楽園」の入口には松平定信像が建っている。そして南湖神社を参拝する。鳥居前には大きな「楽翁公」像が立っている。この「楽翁公」も松平定信のことだ。

 白河の人たちの心の中には今でも松平定信(1758年〜1829年)が生きつづけている。江戸幕府の老中として寛政の改革を成しとげた功績はよく知られているところだが、それだけではなく白河藩の藩政の改革を進め、天明の大飢饉のときは飢えに苦しむ領民の多くを救った。その声望がいまだにこの地では語り継がれているのだ。

 松平定信の墓は東京・深川の霊巖寺にある。そこは芭蕉旅立ちの地のすぐ近く。白河と深川、定信と芭蕉はつながっている!

 南湖公園から白河の市内に入っていく。江戸時代の城下町がそっくりそのまま残っているようなところ。道幅は狭く、敵の襲撃を防ぐクランク型の道もいまだに残っている。趣のある駅舎のJR白河駅から駅裏の小峰城跡へ。スズキST250を駐車場に停め、城山公園を歩いた。そこからは那須連峰の山々が一望できた。

 芭蕉は旗宿でひと晩泊まり、翌日、白河関跡から白河へ、さらに矢吹まで行って泊まっている。「曽良随行日記」では次のように書かれている。

一、 廿一日 霧雨降ル。辰上剋止、宿ヲ出ル。町ヨリ西ノ方ニ住吉・玉嶋ヲ一所ニ祝奉宮有。古ノ関明神故ニ二所ノ関ノ名有ノ由、宿ノ主申ニ依テ参詣。ソレヨリ戻リテ関山ヘ参詣。行基菩薩ノ開基。聖武天皇ノ御願寺、正観音ノ由、成就山満願寺ト云。旗ノ宿ヨリ峯まで一里半、麓ヨリ峯迄十八丁。山門有。本堂有。奥ニ弘法大師・行基菩薩堂有。山門ト本堂ノ間、別当ノ寺有。真言宗也。本堂参詣の比、少雨降ル。暫時止。コレヨリ白河ヘ壱里半余。中町左五左衛門ヲ尋。大野半治ヘ案内シテ通ル。黒羽ヨリノ小袖・羽織・状、左五左衛門方ニ預置。矢吹ヘ申ノ上剋ニ着、宿カル。白河ヨリ四里。今日昼過ヨリ快晴。宿次道程ノ帳有リ。

白河関跡

▲白河関跡

白河関跡の古関蹟の碑

▲白河関跡の古関蹟の碑

白河関跡の芭蕉碑 width=

▲白河関跡の芭蕉碑

白河関跡の白河神社

▲白河関跡の白河神社

旧東山道の旗宿

▲旧東山道の旗宿

南湖公園

▲南湖公園

南湖公園の「三色だんご」

▲南湖公園の「三色だんご」

JR白河駅

▲JR白河駅

小峰城址を歩く

▲小峰城址を歩く

小峰城の天守閣

▲小峰城の天守閣

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