カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

奥の細道紀行[11]

投稿日:2016年8月6日

関東から東北へ

栃木県那須町/2009年

 那須湯本温泉の夜明け。目覚めるとすぐに共同浴場「滝乃湯」に入り、浴衣に下駄という格好で温泉街をプラプラ歩いた。

 7時30分、「月光館」の朝食。塩ジャケ、納豆、のりといった朝食を食べる。

 8時出発。天気は晴天。青空のもとスズキST250を走らせる。

 芭蕉は那須湯本からは漆原経由で奥州街道の宿場、芦野に向かっている。それに沿ったルートということで、県道21号で那須高原を下り、国道4号の漆原に出た。そこから県道21号で芦野まで行った。国道294号の旧道沿いに芦野宿の町並みが延びている。

 芦野宿から奥州街道を北にわずかに行ったところには西行ゆかりの「遊行柳」がある。芭蕉はこれを見たかったのだ。西行を熱烈に慕っていた芭蕉ならではといったところで、当然、立ち寄っている。

 芦野には今でも「遊行柳」の木が残されている。国道294号を白河方向に行った左手、山際の水田の中にある。特にどうという木ではないが、この柳の木はすでに何代も植え替えられている。

 遊行柳の奥には小さな祠の湯泉神社があって、祠前には「上の宮の銀杏」で知られる大銀杏がある。これはすごい。見上げるような大木。樹齢400年とのことで、根回り6メートル、樹高は35メートル。芭蕉がこの地にやって来た頃、すでにあった。

 奥州街道の国道294号を北へと走る。

 奥州街道の関東最後の宿場、寄居宿を通り、泉田の一里塚前を通り、栃木・福島県境の明神峠に到着。ここが関東と東北の境。「奥の細道」も、ここまでが「関東編」ということになる。

 明神峠には境の明神がまつられている。奥州側は住吉神社、関東(下野)側は玉津島神社。両社が国境をはさんで隣りあっている。またここには「二所ヶ関址」碑もある。明神峠を下っていくと奥州街道の東北最初の宿場、白坂宿に入っていく。

 芭蕉はここから白河関跡に向かっていくのだが、カソリはここで国道294号を引き返し、県境を越え、寄居宿を通り過ぎ、芦野宿に戻った。そして道の駅「東山道伊王野」まで行った。

 伊王野からは古代日本の官道、東山道に相当するルートで再度、福島県境に向かっていく。戸中峠を越えて棚倉に通じる県道60号と分岐し、県道76号を行く。

 伊王野から10キロほどで栃木・福島県境の明神峠に到着。このもうひとつの明神峠が関東と東北を結ぶ最古の峠だった。

 県道76号の明神峠には追分の明神がまつられている。もともとはここも境の明神といわれていたようだ。国道294号の明神峠と同じように関東側には玉津島神社がまつられている。かつては奥州側には住吉神社があったという。峠には「従是北白川領(これより北は白河領)」と彫り刻まれた石塔が立っている。

 関東と東北を結ぶ最古のルートで福島県に入り、県道76号を下っていった。

 ここからは「奥の細道」も「奥州編」になる。

清水流るるの柳は、蘆野の里にありて、田の畔に残る。この所の郡守戸部某の『この柳見せばや』など、をりをりにのたまひ聞こえたまふを、いづくのほどにやと思ひしを、今日この柳にこそ立ち寄りはべりつれ。

『おくのほそ道』

この中にある「清水流るる柳」こそ「遊行柳」で、西行が「道のべに清水流るる柳陰しばしとてこそ立ち止まりつれ」と詠んだ。

 那須湯本温泉から明神峠までの芭蕉の行程は、「曽良随行日記」では次のようになる。

一、 廿日 朝霧降ル。辰中剋、晴。下剋、湯本ヲ立。ウルシ塚迄三リ余。半途ニ村有。ウルシ塚ヨリ芦野へ二リ余。湯本ヨリ総テ山道ニテ、能不知シテ難通。
一、 芦野ヨリ白坂ヘ三リ八丁。芦野町ハヅレ、木戸ノ外、茶や松本市兵衛前ヨリ左ノ方ヘ切レ、八幡ノ大門通之内、左ノ方ニ遊行柳有。其西ノ四五丁之内愛宕有。其社ノ東ノ方、畑岸ニ玄ジョウノ松トテ有。玄ジョウの庵跡ナルノ由。其辺ニ三ツ葉芦沼有。見渡ス内也。八幡ハ所之ウブスナ也。
一、 芦野ヨリ一里半余過ぎて、ヨリ居村有。是ヨリハタ村へ行バ、町ハヅレヨリ右へ切也。
一、 関明神、関東ノ方ニ一社、奥州ノ方ニ一社、間廿間計有。両方ノ門前ニ茶屋有。小坂也。コレヨリ白坂へ十町程有。古関を尋て白坂ノ町ノ入口ヨリ右へ切レて旗宿ヘ行。廿日之晩泊ル。暮前ヨリ小雨降ル。

那須湯本温泉「月光館」の朝食

▲那須湯本温泉「月光館」の朝食

奥州街道の芦野宿

▲奥州街道の芦野宿

奥州街道の芦野宿碑

▲奥州街道の芦野宿碑

遊行柳

▲遊行柳

国道294号を行く

▲国道294号を行く

泉田の一里塚

▲泉田の一里塚

奥州街道の明神峠

▲奥州街道の明神峠

奥州街道の白坂宿

▲奥州街道の白坂宿

旧東山道の明神峠

▲旧東山道の明神峠

明神峠の「従是北白川領」碑

▲明神峠の「従是北白川領」碑

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