カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

アドレス日本一周 east[65]

投稿日:2013年9月26日

国後島を見る

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2008年12月2日

 標津からは国道335号で知床半島に入っていく。雪をかぶった知床の連山が見える。海別岳(1419m)から遠音別岳(1331m)、羅臼岳(1661m)、硫黄岳(1563m)、知床岳(1254m)とつづく山並みだ。そのうち羅臼岳が知床半島の最高峰になっている。
 根室海峡の対岸には北方領土の国後島が見える。国後島の山並みは泊山(543m)、羅臼山(888m)から爺爺岳(1822m)へとつづいている。爺爺岳が国後島の最高峰になっている。それらの山を中心にして、国後島はまるでいくつもの大島がつながっているかのように見える。
 スズキの50ccバイク、SMX50を走らせての「島めぐり日本一周」(2001年〜2002年)では、全部で日本の188島をめぐった。その時、一番残念であり、一番悔しかったのは「北方四島」に渡れなかったことだ。
 そこで「北方四島」徹底的に見ることにした。
 今回と同じように納沙布岬で歯舞諸島の島々を見た。そして標津から国後島を見た。さらに羅臼岳に登り、山頂から択捉島を見た。そのときのことを紹介しよう。

 根室から知床半島入口の標津へ。標津に着くと浜に立ち、根室海峡の向こうの国後島を見る。日本第2位の大島だ。
 標津からだと国後島の南端あたりが見えている。標津温泉「くすのき」(入浴料360円)の湯に入り、町中の食堂「亀代」で「ホタテ刺し身定食」(1250円)を食べ、国道335号で知床半島の羅臼へ。右手には国後島がはっきりと見える。このあたりから見えるのは国後島西部の泊湾。島内では最良といわれた湾だ。
 羅臼からさらに根室海峡に沿って北へ。国後島がよりはっきりと見えてくる。海中のセセキ温泉の露天風呂につかり、水平線上に浮かぶ国後島を眺める。このあたりから眺める国後島は、いくつもの大島が鎖状に連なっているかのように見える。セセキの先、相泊で道は行き止まりになるが、そこからだと国後島の最高峰、爺爺岳(1822m)が霞んで見えた。相泊の食堂「熊の穴」では「トド肉定食」(1200円)を食べた。海獣トドの焼肉で、北海道ならではのもの。クジラに似たトドの肉の味だった。
 羅臼に戻ると、夕日に照らされた国後島が一段とよく見えるようになる。羅臼の町並みと国後島を一望する「羅臼国後展望台」に上がり、夕暮れの国後島をしばらく眺め、羅臼温泉の「らうす第一ホテル」に素泊まりで泊まった。
 翌朝は朝風呂に入ったあと、5時に出発。3日つづきの快晴で、抜けるような青空だ。
 羅臼からは知床半島横断道路の国道334号で知床峠に向かう。峠の登り口の無料湯、露天風呂の「熊の湯」に入る。人気の湯だけあって、早朝から何人もの人たちが入っている。湯から上がると、知床半島を登っていく。50ccバイクのSMX50にとってはきつい登りだ。空の色がますます青くなり、スーッと吸い込まれそうになる。標高738メートルの知床峠に到達。目の前には知床半島の最高峰、標高1661メートルの羅臼岳がそびえたっている。
 ここでは車でやってきた若い女性に「写真をとって下さい」と頼まれ、シャッターを押してあげた。すると彼女は、
「私、これからあの羅臼岳に登るのよ」
 と、指を差してうれしそうにいう。
 さらに、
「山頂から択捉島が見えるのよ」
 というではないか。
 ノーブラで薄地のTシャツ1枚の、胸をプルンプルンさせている彼女の「択捉島が見えるのよ」の一言に、激しく心を揺り動かされ、ぼくも即座に羅臼岳に登ることにした。
 さっそく彼女に質問。
「羅臼岳にはどこから登るの?」
「岩尾別温泉からよ」
「どのくらい時間がかかるの?」
「4時間くらいかな」
 知床峠からオホーツク海側の宇登呂に下ると、観光船の案内所でトーストとコーヒーの朝食を食べ、コンビニの「セイコーマート」でおにぎり4個とチョコレート、ミネラルウォーターを買い込んだ。そしてはやる気持ちを抑えて岩尾別温泉へ。
 10時、羅臼岳の山頂を目指し、岩尾別温泉の一軒宿、「地の涯ホテル」のわきから登りはじめる。頂上までは7・2キロ。ヒグマとの遭遇が怖い…。もし出会ったらどうしようと、けっこう本気で不安な気持ちにかられた。
 11時、2・2キロ地点の「650岩峰」に到着。ここまでがヒグマと出会う危険性が一番高いということで、まずはひと安心。エゾハルゼミがチッチチッチチッチと鳴いている。
 12時、4・4キロ地点でおにぎりを2個、食べる。このあたりを過ぎると雪渓が出てくる。そのうちのひとつで道を見失って右往左往し、ムダなヤブこきをしたりして激しく体力を消耗させた…。ルートに戻ると、大沢の大雪渓をツルツル滑りながらもかろうじて登りきり、稜線上の羅臼平に出る。ここまでで3時間。頂上まであと1キロ。気合を入れて山頂を目指して登っていると、早朝の知床峠で出会った彼女と再会。
「択捉島、見えたわよ!」の言葉と「山頂まであともうひと息だからがんばってね」の励ましのおかげで俄然、元気が出た。
 岩場を登りきって山頂に立った。登りはじめて4時間15分。そこからの眺めは絶景。知床半島の残雪の連山を一望し、眼下の国後島の向こうには択捉島がまるで空に浮かんでいるかのように見えた。
 思わず「(択捉が)見えたゾ〜!」と叫んでしまった。
 羅臼岳の下りは2時間30分。その夜は岩尾別温泉の「地の涯ホテル」に泊まる。たまたまキャンセルの客が出たとのことで、飛び込みで泊まれたのはラッキー。さっそく露天風呂の湯につかり、疲れ切った体を温泉で癒すのだった。

小学館文庫『島の温泉・日本一周』より

 日本一の大島、択捉島と、日本第二の大島、国後島を見た「島めぐり日本一周」だった。残念ながら「北方四島」のうち、色丹島は見ることができなかった。
 今回の「60代編日本一周」でも右手に国後島を見ながら国道335号を走り羅臼へ。ここからは国道334号で知床峠を越えたかったが、すでに冬期閉鎖。国道334号は北海道では唯一の冬期閉鎖国道だ。
 羅臼の町から知床半島の最高峰、羅臼岳を眺め、羅臼温泉「らうす第一ホテル」(入浴料500円)の湯に入った。湯につかりながら、羅臼岳の山頂から見た択捉島を思い出すのだった。
 湯から上がると冷風を切り裂いて走り、来た道を引き返し、国道335号で標津に戻った。

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標津から国道335号で羅臼へ
雪の知床の連山を見る


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根室海峡の対岸には国後島
羅臼温泉「らうす第一ホテル」の湯に入る


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