カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

アドレス日本一周 west[31]

投稿日:2012年12月24日

紀伊水道をまたぐ

徳島←和歌山←奈良←和歌山←三重←愛知←静岡←神奈川←東京

 本州最南端の潮岬を後にし、県道41号で串本へ。
 県道41号は潮岬周遊ルートで、小半島をぐるりと一周できる。
 スズキの50ccバイク、ハスラーTS50を走らせての「30代編日本一周」(1978年)のときには、この県道41号は2区間に分かれた有料道路だった。1区間の料金が10円。2区間を合わせても20円。料金所では「ここは日本で一番安い有料道路!」と、自慢気にいわれたが、そんな言葉がなつかしく思い出されてくる。
 もっとも潮岬は正確にいうと半島ではなく島、串本と砂洲でつながった陸繋島だ。
 串本からは国道42号を行く。左手に太平洋を見ながらアドレスを走らせる。南紀の国道42号は交通量の少ない快走ルートだ。
 椿温泉を過ぎたところで国道42号を左折し、名所の三段壁から白浜温泉へ。天気が崩れ、雨が降ってきた。
 南紀最大の温泉地、白浜温泉に着くと、海岸の露天風呂「崎の湯」(入浴料300円)に入る。有料になった「崎の湯」には、もとからの露天風呂のほかにもうひとつ、海岸スレスレのところに新しい露天風呂ができている。もとからの露天風呂が熱めの湯、新しい露天風呂が温めの湯と、2つの露天風呂は湯温が違う。
「崎の湯」のある湯崎は白浜温泉の中でも一番、歴史の古い地区。「湯崎七湯」で知られている。
 白浜温泉から田辺へ。
 熊野街道の大辺路(海岸ルート)と中辺路(内陸ルート)が分岐する田辺は弁慶誕生の地。市内の闘鶏神社には「弁慶誕生之地」碑が建っている。さらに市内には「弁慶産湯の井戸」や「弁慶産湯の釜」、「弁慶の腰掛け石」、「弁慶松」など弁慶の史蹟が数多く残されている。JR田辺駅前には弁慶像が建っている。
 田辺からは国道42号で御坊へ。
 その途中でやられた…。スピード違反で捕まった…。18キロオーバーで罰金9000円。クソーッ。しかしものは考えようで、18キロでよかったのかもしれない。点数も1点ですんだ。
 御坊で国道を離れ、紀伊半島最西端の日ノ岬に向かう。途中の煙樹ヶ浜は見事な松林。潮吹岩を見、三尾の集落から急勾配の道を登りつめ、日ノ岬に立った。国道42号からちょうど10キロだ。
 日ノ岬では「アメリカ村資料館」を見学。アメリカ村というのは三尾の集落のことだが、そこにはアメリカ風の洋館が建ち並んでいたり、英語の看板があふれているわけではない。高い石垣や屋根瓦を漆喰で塗り固めた家々が目立つだけである。
 明治20年、そんな三尾出身の工野儀兵衛が、カナダのバンクーバーに渡った。儀兵衛は苦労を重ねた末、旅館を開き、フレーザー川のサケ漁で大成功をおさめ、三尾の人たちを呼び寄せるようになった。それが「アメリカ村」のはじまりだ。
 現在、三尾の人口は約1000人。その5分の1がアメリカ(カナダのことだが)帰り。バンクーバーとその周辺には、三尾出身の日系人が4500人も住んでいるという。
 晴れていれば日ノ岬の展望台からは、紀伊水道の向こうに四国最東端の伊島と蒲生田岬が見え、さらに幾重にも重なり合った四国山脈の青い山並みが見えるのだが、残念ながら紀伊水道は雨で煙っていた。
 御坊に戻り、国道42号で和歌山に向かう。雨が本降りになる。やがて日が暮れ、雨中のナイトラン。有田を過ぎたところでやってしまった…。1台前の車が突然、急ブレーキをかけた。追突しないようにぼくも急ブレーキをかけた瞬間、ステーンと転倒し、車線上をツーーーッと滑った。対向車線に飛び出さなくてよかった。後続車にはね飛ばされなかったのもラッキーなことだった。
 すぐさま転倒したアドレスを起こし、路肩に逃げる。
 エンジンをかけたが、異常なし。各部を点検したが、異常なし。路面が雨で濡れていたので、車体にはほとんど傷がついていない。体は強打したが、骨に異常はない。痛みをこらえてアドレスにまたがり和歌山へと向かった。
 スピード違反といい、雨中の転倒といい、もう最悪の1日だ。
 和歌山に到着すると、和歌山港に直行。南海フェリーで徳島に渡るのだ。
 フェリーターミナル内の食堂で「ハンバーグ定食」(1050円)を食べ、21時35分発の南海フェリーに乗り込もうとした。その時、バイクショップ「モトファクトリー・アンドウ」の安藤勝弘さんがかけつけて来てくれた。「300日3000湯」のときに出会った人。なつかしの「リポビタンD」と魚肉ソーセージの差し入れをいただく。
 安藤さんに再会したことで、最悪の1日はいっぺんにハッピーな1日に変わった。
 安藤さんが持ってきた「300日3000湯」の本にサインをし、ガッチリと握手を交わして別れた。
 アドレスともども南海フェリーに乗り込む。フェリーが和歌山港を出港すると甲板に上がり、雨まじりの冷たい風に吹かれながら暗い海を見た。
 徳島港到着は23時25分。ありがたいことに雨は止んでいた。
 徳島港から徳島駅前まで行き、飛び込みで「東横イン」に泊まった。体中を突き抜ける痛みに耐えて部屋の風呂に入り、湯から上がると、安藤さん差し入れの魚肉ソーセージを肴にカンビールを飲んだ。それは至福の時だった。

第5日目:奈良・下湯温泉→徳島
2008年10月5日
走行距離:330キロ(合計1335キロ)
費用:
新宮の浮島 100円
新宮の浮島 100円
ガソリン 731円
蓬莱の湯 420円
昼食 630円
さんごの湯 400円
カンジュース 120円
潮岬灯台 200円
崎の湯 300円
ガソリン 688円
夕食 1,050円
南海フェリー 3,200円
宿泊 6,090円
合計 14,139円
総計 62,474円


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潮岬を遠望する
雨の「崎の湯」


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日ノ岬へ
日ノ岬の灯台


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和歌山港に到着
夕食の「ハンバーグ定食」


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安藤さんからの差し入れ


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