カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

アドレス日本一周 west[25]

投稿日:2012年12月17日

熊野三山のひとつ熊野速玉大社

和歌山←三重←愛知←静岡←神奈川←東京

 かつての難路、国道260号を走り抜け、紀伊長島で国道42号に合流。道の駅「紀伊長島マンボウ」でアドレスを止める。ここでは名物のマンボウの串焼き(300円)を食べた。焼鳥を思わせるようなかみごたえがあるが、肉の味は淡白だ。
 紀伊長島から国道42号を南下していく。
 尾鷲からは海沿いの国道311号に入る。八鬼山トンネルを抜け、海岸に下ったところが九鬼。奥深くまで切れ込んだ入江では、タイやハマチなどの養殖が盛んにおこなわれている。入江の奥が九鬼漁港。漁業集落の九鬼は中世の熊野海賊(九鬼水軍)の根拠地だった。熊野灘を行き来する船をひんぱんに襲った熊野海賊は、やがて有力大名と手を結ぶようになる。うっそうとした森がおい茂る「九木神社」の石段に座り、なんとも穏やかな九鬼漁港を見下ろしていると、「ほんとうにここが海賊の根拠地だったのだろか…」といった歴史の無常感にとらわれる。
 九鬼を過ぎると広狭混在の道を走りながら、賀田湾、二木島湾、新鹿湾とすばらしく青い紀伊半島東岸の海を見る。
 国道42号に合流すると、駐車場にアドレスを停め、鬼ヶ城を歩いた。
 すごい海岸の風景。石英粗面岩の断崖がストンと海に落ちている。熊野の海はまばゆいばかりにキラキラ輝いている。スーッと吸い込まれそうになるほどの青い海。鬼ヶ城の先端は「千畳敷」。岩の大広場がひらけ、それが階段状になって海に落ちている。背後は覆いかぶさるような大岩。国道42号のすぐ脇にこんな世界がある!
 熊野市内の国道42号沿いには大岩の獅子岩がある。北から南に走ると、ちょうどスフィンクスの後姿を見るようで、気がつかないまま通りすぎてしまうかもしれない。だが、反対に南から北に走ると、大きく口をあけて熊野灘に向かって吠えている獅子の顔がじつによく見える。まさに「獅子岩」だ。
 この獅子岩を境にして熊野灘の海岸線は入り組んだリアス式海岸から、七里御浜の一直線にスーッと延びる砂浜へと、劇的に変わる。
 熊野川河口までのきれいな砂浜は七里御浜と呼ばれている。松の防風林が途切れたあたりからは、スーッと延びる七里御浜の海岸線を一望できる。
 その途中には道の駅「パーク七里御浜」。ここにはレストランやみやげもの店が並ぶ。海岸ではすべすべした光沢のある「御浜小石」を拾える。磨けば装身具にもなるとのこと。志摩半島突端の大王崎から紀伊半島最南端の潮岬までが熊野灘の海岸線。その大半は入り組んでいる。唯一、ここ、七里御浜だけが直線的だ。
 こうして紀伊半島の大河、熊野川の河口を渡って和歌山県の新宮の町に入っていった。
 新宮の駅近くには「徐福公園」がある。中華街を思わせるような極彩色の門。徐福は秦の始皇帝のころの人で、皇帝から不老長寿の霊薬を探してくるように命じられ、金銀財宝を積んだ船で黒潮にのって熊野にやって来た。全部で85隻もの大船団を率いてやってきた。それらの船には数千人もの男女が乗っていたという。
 そのままこの地に住み着いた徐福らは熊野人たちに大陸の進んだ農業や漁業の技術を伝え、今なおこの地の人たちの心の中に生きつづけているというのだ。
「徐福公園」内には徐福の墓がある。高さ2メートルほどの墓には「秦徐福之墓」と記されている。その隣には不老長寿の霊薬になるという常緑のクス科の木。「天台烏薬(てんだいうやく)」というそうだ。
 徐福の墓を見たあと、「熊野三山」のひとつ熊野速玉大社を参拝。朱塗りの社殿が色鮮やかだ。境内には上皇や法皇の「熊野詣」の回数を記した碑が建っている。後白河上皇が33度、後鳥羽上皇が29度…など、京から「熊野三山」へとたいへんな回数の「熊野詣」をしている。境内の御神木のなぎの木は高さ20メートル、幹廻り6メートルで、日本一のなぎの巨木だという。
 今回の日本一周は海岸線のルートが基本だが、全都道府県には足を踏み入れる予定にしている。そこで内陸県の奈良県には、新宮から国道168号を北上して入ることにした。

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道の駅「紀伊長島マンボウ」のマンボウの店
マンボウの串焼き


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熊野速玉大社の参道
熊野速玉大社の楼門


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熊野速玉大社の本殿
上皇、法皇らの「熊野詣」の回数


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熊野速玉大社の御神木
熊野古道の案内図


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