カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

V-Strom1000で行く日本[2]

投稿日:2015年10月26日

原発事故の重い後遺症

2015年9月10日(福島一周)

 小名浜港のクルージングを終えると小名浜漁港へ。漁港には以前のような活気は見られないが、新しい魚市場が完成している。冷凍冷蔵施設を備えた一部5階建の建物。岸壁も整備されている。沿岸漁業用のA棟と沖合漁業用のB棟から成る東北でも有数の規模の魚市場だ。東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故の風評被害ですっかり水揚げ量の減ってしまった小名浜漁港だが、この新しい魚市場の完成で以前のような活況が戻ることを願うばかりだ。

 小名浜からは北に延びる海岸線の岬をめぐっていく。まずは三崎。岬全体が三崎公園で広々とした園地が広がっている。公園の中央には、小名浜のランドマークのマリンタワーが立っている。三崎の展望台に登り、足下の小名浜漁港と小名浜の町並みを一望。ここではもう1ヵ所、潮見台にも立った。海に突き出た潮見台からは断崖のつづく海岸線を見る。迫力のある風景だ。

 つづいて竜ヶ崎、合磯岬、塩屋崎、富神崎と見ていく。竜ヶ崎が中之作漁港、合磯岬が江名漁港、塩屋崎が豊間漁港、富神崎が沼ノ内漁港というように、これらの岬は漁港とセットになっている。江名漁港は大規模な修復工事がつづいているが、それ以外の漁港は修復され、岸壁は作りなおされている。それにもかかわらず以前のような活気は見られない。漁船の数も少ない。閑散とした風景。これらはすべて東電の原発爆発事故によるもの。福島県の太平洋岸の浜通りは、原発爆発事故の重い後遺症を背負いつづけている。

 塩屋崎では「塩屋埼灯台」(200円)に登った。灯台のてっぺんからは、南側の豊間海岸と北側の薄磯海岸を一望のもとに見下ろせる。まさに絶景灯台。灯台下の美空ひばりの歌碑には花が供えられている。

 塩屋崎の南側の豊間も北側の薄磯も、大津波の被害を受け、集落はほぼ全滅した。ところが富神崎の北側の沼ノ内は奇跡のエリアで、大津波の被害をほとんど受けることなく、海岸の堤防は残り、海沿いの家々も無傷で残った。富神崎を中心にして見てみると、薄磯は岬の南側、沼ノ内は北側になる。東日本大震災の震源地は牡鹿半島の沖合なので、震源地により近い沼ノ内の方がより大きな被害を受けそうなものだが、実際には富神崎に守られたような地形の薄磯の方が甚大な被害を受けた。このあたりの津波のメカニズムをぜひとも知りたいと思った。そんな沼ノ内でも新しい堤防が造られている。

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▲小名浜漁港の完成した魚市場

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▲新しい魚市場から見る小名浜漁港

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▲三崎の展望台から見下ろす小名浜漁港

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▲三崎の潮見台

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▲潮見台から見る小名浜の断崖絶壁

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▲閑散とした中之作漁港

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▲工事がつづく江名漁港

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▲塩屋崎の灯台

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▲塩屋埼灯台から北側の薄磯海岸を見下ろす

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▲塩屋埼灯台から南側の豊間漁港を見下ろす

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▲沼ノ内の海岸には新しい堤防が造られている

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