カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

環日本海ツーリング[14]

投稿日:2012年2月26日

ニシン豊漁の秘密がここに

 江差に到着すると、まずは姥神大神宮に参拝。この姥神大神宮の「渡御祭」は北海道遺産に指定されている。その起源は370年前にさかのぼり、蝦夷地最古の祭りだという。
 毎年8月9日から11日まで、各町内の13台の山車が江差の町を練り歩く。屋台にトドマツの青木をたてるところがいかにも北海道らしい。11日の夜にはそれぞれの山車が勢ぞろいし、それは壮観な眺めだという。

江差の姥神大神宮を参拝
姥神大神宮の折居社


江差漁港
復元された戊辰戦争の開陽丸


 姥神大神宮の境内には13台の出車の模型が飾られているが、渡御祭はニシンの豊漁への感謝を込めた祭りだとのことで、ニシン漁で栄えた江差を象徴している。
 姥神大神宮の境内には折居社がまつられているが、この祠には江差にニシン漁を伝えたとされる「折居様」がまつられている。
 この折居様にまつわる次のような伝説はじつに興味深いものだ。

 今から500年も昔、江差町がまだ寂しい片田舎だったころ、どこからか姥がやってきて、今の津花町に草庵を結びました。
 不思議なことに、天地の間、四季の事々、この老女の予言がことごとく当たり、変事が起こるたびに予知して教えるので、人々はこの老婆を「折居様」と呼び、神のように敬いました。
 ある年、江差の浜で一匹の魚も捕れないことがあって、老婆は一心不乱に祈りを捧げました。2月はじめの頃、夜の丑三つ時、鴎島の方から突然、銀色の光が老婆の草庵を射ったので不思議に思い、訪ねてみると一人の翁が岩の上に座って、芝をしきりに焚いています。おそるおそる歩み寄ってその訳をたずねてみると、翁は小さな瓶をとりだして
「この瓶の中に白い水がある。これを海の中に投げ入れると、ニシンという小さなサカナがうち寄せるだろう。毎年、これを捕って暮らしたらよかろう」
 と告げて姿を消してしまいました。
 そこで老婆は教えられたとおりにしてみると、海水は変わり、今まで見たことのない魚が群れをなして押し寄せてきました。老婆は、これこそがお告げのあった「ニシン」に違いないと、村人たちに教えました。ところが、村人たちは、これだけ大量の魚をどう捕獲するのかわかりません。
 そこで老婆が祈ると、再びあの翁が現れ、一枚の蓑の裏側を示しました。蓑の裏側は糸で編んだ網でした。翁は網でニシンを捕る方法を教えたのです。そして
「ただし、その高さはお前の背の高さ、目の数はお前の年と同じものにせよ」
 と言い残し消えました。老婆は村人たちに網の作り方を教えました。
 喜んだ村人は早速、漁を始め、江差の浜はやがてニシンで満ちあふれました。老婆は、これで住民たちは暮らしに困ることがないだろうと告げ、ある日、こつぜんと去っていきました。人々は驚いて方々を探しましたが行方はわからず、老婆が住んでいた庵に行ってみると、一個の神像があったのでこれを「折居様」と呼んで漁業を護る神としてあがめました。
 その後、だいぶたってからこの神社の神職に藤原永武という人が現れ、かの姥は天照大神、春日大明神、住吉大神宮の御尊体であると人々に告げたので、正保元(1644)年、その神像を津花から現在の場所に移したのです。これが姥神大神宮の由来です。
 ところで、老婆が村人に示した網の大きさは、高さが五尺三寸(約1m59cm)目の数は63だったといいます。老婆はこれを固く守るように村人に言い渡しましたが、欲に目のくらんだ人々はいつしかこれを忘れて、大きな網で漁をするようになりました。それは明治の初めの頃だといいます。このころからニシンが捕れなくなってきたのは、老婆の言い付けを守らなくなったからだと信じる人が今もおります。
 江差の人々にニシン漁を教えた折居様。
 折居様が祈りを捧げた神像を起源とする姥神大神宮。今になっても江差の人々の厚い信仰を集めています。姥神町の旧社地には「折居様の井戸」が遺構として残っています。
 また折居様が、身を清めて白い水を詰めた小瓶を投げたという「折居様の手洗石」は中歌町の埋め立て地に埋没してしまいましたが、海中に投げ入れられた小瓶はやがて石となって海上に現れ、鴎島の「瓶子岩」になったといいます。
 姥神大神宮とは別に、折居様を祀っているものに折居社があります。安政4(1857)年に元の江差港入口から現在地に移され、現在の社殿はおよそ110年前に再建されたものです。姥神大神宮も、はじめ津花町に建てられ、正保元(1644)年に現在地に移されたのです。松前地はもとより蝦夷地の一宮として、代々の藩主、領民の尊崇を集め、藩主の巡国の折には、かならず参殿して藩の隆盛、大漁、五穀豊穣を祈願する祈願所となりました。 (江差町のHPより)

 姥神大神宮の参拝を終えると鴎島へ。
「折居様伝説」で重要な舞台として登場する鴎島は、江差港沖に浮かぶ周囲2・6キロの無人島だ。今では港湾整備で埋め立てが進み、江差の町と地続きになっているので歩いて島に渡れる。島に渡ってすぐのところに「折居様伝説」の瓶子岩が見える。島内には江差追分の記念碑や厳島神社、徳川幕府の砲台跡などがあり見処満載。鴎島は江差港を護る天然の大防波堤になっている。

鴎島の案内図
鴎島の入口


鴎島を歩く
「折居様伝説」の瓶子岩


鴎島から見る江差の山々
江差からは国道227号を行く


 さて、江差を出発。
 スズキDR-Z400Sを走らせ、日本海沿いの国道227号を北上。この国道227号も日本海絶景ラインだ。
 見事な柱状節理の断崖が見られる鮪(しび)ノ岬を通り、江差から38キロ、熊石に到着。熊石の「セイコーマート」で「日替弁当」(395円)の朝食を食べた。

波静かな日本海で漁をする小舟
鮪ノ岬の石碑


鮪ノ岬のトンネル
鮪ノ岬の柱状節理


熊石に到着
熊石の「セイコーマート」で朝食



Comments

Comments are closed.

  • 最近の投稿

  • アーカイブ

  • カテゴリー

  • ツーリングマップル

    東北四端紀行・奥の細道紀行に
    最適なナビゲーター

    2017年版発売

    ツーリング情報満載の地図
    「ツーリングマップル」
    北海道東北関東 甲信越
    中部 北陸関西
    中国・四国九州 沖縄


    リング式、文字の大きな
    「ツーリングマップルR」
    北海道東北関東 甲信越
    中部 北陸関西
    中国・四国九州 沖縄

    発売に寄せて賀曽利のコメント
  • メルマガ「カソリング」

    「賀曽利隆の六大陸周遊記」配信中
    メルマガ購読・解除
     
  • 新刊紹介(賀曽利隆連載中)

    風まかせ No.61
    3月6日発売


    連載

    「焚火日和」

  • おすすめの一冊


    風をあつめて、ふたたび。
    文:中部博 写真:武田大祐
    平原社

    「すばらしい写真の数々に感動!
    真っ赤な夕日を背にしたカソリ(P228〜P229)も登場しています。
    ぜひともご覧ください」(賀曽利隆)

  • おすすめの一冊


    「日本と違った世界を実際に見ることは、お金では決して買えない、かけがえのない体験です。その後の人生、生き方にもきっと、大きな影響を与えてくれるはずです。ぜひとも、一人でも多くのみなさんが、海外へ飛び出してほしいと願っています。もちろん、僕もまだまだ、走り続けますよ!」

    (賀曽利隆)

    7月24日発売
    360ページ
    出版社:ラピュータ
    価格:1800円+税