カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

第76回 月夜沢林道

投稿日:2011年3月26日

2010年 林道日本一周・西日本編

氷見から信州へとブリが運ばれた野麦峠を越える

 飛騨の中心、高山からは国道361号を行く。中央分水嶺の峠、美女峠越えの区間は大きく変っていた。新道の「飛騨ふるさとトンネル」が完成し、スズキDR-Z400Sでかつての難所をあっというまに走り抜けていく。
 飛騨川上流の流れに沿って走る。国道沿いの塩沢温泉では「七峰館」(入浴料500円)の大浴場の湯につかり、その先の分岐を左へ。国道361号から県道39号に入り、野麦の集落を通り、岐阜・長野県境の野麦峠に到着。
 野麦峠というと「飛騨ブリ」を思う。
 もちろん山国の飛騨でブリはとれないが、ブリの本場、富山湾の氷見漁港に揚った「氷見ブリ」は飛騨・高山を経由し、野麦峠を越えて信州に入ると「飛騨ブリ」と呼ばれるようになる(ちなみに飛騨では「越中ブリ」といっている)。
 高山から野麦峠に通じる道は「ブリ街道」。国道361号沿いの道の駅「ひだ朝日村」には、写真、地図つきの「ブリ街道」の案内板があった。
 ブリは越中のみならず、飛騨から信州の一帯にかけて、正月魚として欠かせないもの。かつては歩荷(ボッカ)たちは「飛騨ブリ」を背負って雪深い野麦峠を越え、信州側の松本盆地へと下っていった。野麦峠の標高は1672メートル。北アルプスの高所の峠をブリが越えた。
 野麦峠も美女峠と同様、中央分水嶺の峠。信州側に入ると、日本海に流れ出る信濃川の水系になる。
 野麦峠から6・3キロを下ったところで月夜沢林道に入っていく。信州ではぼくの一番好きな林道だ。すぐにダートに突入し、6・7キロ走ると月夜沢峠に到達。
 そこには月夜沢峠の説明が次のように書かれている。

 標高1695メートル。木曽郡内の峠のうちで最高の標高をもった峠である。(開田高原側の)末川小野原よりこの峠をこえて、奈川村川浦で野麦街道と合流する。
 木曽福島に幕府直轄の関所が設けられ、関所の通過には通行手形を必要とするなどの取締りが強められたため、この道はしばしば松本と福島以南を結ぶ間道として利用され、間道を通るのは月夜が多いので、この峠を月夜沢峠と呼ぶようになったと伝えられる。
 峠の頂上には明治9年(1876年)に西野・末川両村で通行安全のために建てた道祖神碑と、明治17年(1884年)に、再び西野・末川両村で建てた御嶽神社の碑がある。明治21年(1888年)には末川・奈川両村の協力で、この峠道の大改修をおこなった。(後略)

 月夜沢峠までは問題なく走れた。ところが峠を越えたとたんに道は大荒れ。崩落箇所が連続する。崩れた礫の山を越えていく。
「ヤバイな…」
 と思いつつも、月夜沢林道は何度も走って勝手を知った林道なので、そのまま無理して下っていった。
 しかし、ついに峠から1・6キロ地点で大崩落。林道はストーンと抜け落ちていた。万事休す。すぐさま引き返したが、そう簡単には戻れない。というのは何箇所もの崩落現場を登っていかなくてはならないからだ。下りだと何とか越えられた礫の山も、登りだとそうはいかない。思いっきりアクセルをふかしても、DRの後輪は空転するばかり。エンジン音が夕暮れの山中に虚しく響き渡る。
「よーし!」
 と気合を入れ、DRを降り、1速もしくは2速のギアを使い、半クラッチで押し上げていく。月夜沢峠まで戻ったときはもうヒーヒーハーハー状態だった。
 すっかり暗くなった月夜沢峠から県道39号に下ると、松本へと向かっていく。
 国道158号に合流し、山中から抜け出たあたりの竜島温泉「せせらぎの湯」(入浴料500円)に入る。大浴場と露天風呂。露天風呂の木の湯船につかっていると、月夜沢林道での悪戦苦闘が生々しくよみがえってくる。
 湯から上がると、国道158号沿いの「ラーメンとん太」で「ラーメンライス」の遅い夕食を食べ、22時30分、松本駅前に到着。「東横イン」で泊まった。

より大きな地図で 林道日本一周 を表示

フォトアルバム

国道361号の「飛騨ふるさとトンネル」
国道361号を行く


塩沢温泉「七峰館」
塩沢温泉「七峰館」の大浴場


野麦峠を登っていく
岐阜・長野県境の野麦峠


月夜沢林道のダートに突入!
月夜沢峠に到達


月夜沢峠の開田高原側
月夜沢峠からの眺め(開田高原側)


竜島温泉「せせらぎの湯」
「ラーメンとん太」で夕食



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