カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

第58回 津和野

投稿日:2011年2月27日

2010年 林道日本一周・西日本編

掘割を鯉が泳ぐ、歴史のある城下町に入っていく

 国道9号で山口・島根県境の野坂峠のトンネルを抜け、峠道を下ったところで、島根県側の津和野の町中へと入っていく。
 道端を勢いよく流れる側溝から水を引き、庭の池で鯉を飼っている家が多い。
 津和野は津和野盆地の城下町。鎌倉時代の吉見氏にはじまり、江戸時代の坂崎氏、亀井氏へとつづく城下町としての歴史は長い。その面影を濃くとどめる掘割には色とりどりの鯉が泳いでいる。
 津和野の鯉の歴史も負けずに長い。それには400年の歴史がしみついている。
 関ヶ原の合戦後、津和野城の城主となった坂崎氏は津和野川から水を引き、用水路として町内を網の目のようにめぐる側溝を整備した。その際、いつ合戦が始まってもいいようにと、非常時の食料用として鯉を飼わせたのだという。
 津和野城は山城。城址は津和野川を見下ろす城山にある。城山の頂上には壮大な石垣が残されている。目の前にはお椀をふせたような形をした青野山(908m)がそびえているが、「津和野富士」といってもいいような青野山はどこからも見える目につく山だ。
 津和野城址の近くには「日本五大稲荷」のひとつ、太鼓谷稲成神社がある。
「日本五大稲荷」とは竹駒稲荷(宮城)、笠間稲荷(茨城)、豊川稲荷(愛知)、伏見稲荷(京都)、それとこの津和野の太鼓谷稲成なのだという。
 日本には4万社以上の稲荷神社があるとのことだが、その大半は「稲荷神社」で、22社は「稲生神社」、「稲成神社」と書くのは日本でも太鼓谷稲成1社だけだという。
 津和野の曹洞宗の古刹、永明寺は堂々とした伽藍を誇っている。
 応永27年(1420年)、吉見頼弘によって創建されたとのことで、吉見、坂崎、亀井とつづく歴代藩主の菩提寺になっている。津和野出身の文豪、森鴎外の墓もある。
 その永明寺の脇の細道に入り、永明寺林道に向かって登っていく。キリシタン迫害の歴史を秘めた乙女峠への道との分岐点からダートに突入。スズキDR-Z400Sのアクセルを吹かし、500メートルほど登ると、峠の真っ暗な素彫りのトンネルに入っていく。
 トンネル内はギョッとする光景。まさに蝙蝠の巣窟で、何千、何万という無数の蝙蝠がうごめいていた。これだけの数の蝙蝠を見るのは初めての体験で、思わず身震いしてしまった。
 大荒れのダートを200メートルほど下っていくと、竹藪がバサーッと倒れていた。通行不能…。その地点から永明寺に戻ったが、0・7キロのダートを往復した永明寺林道だ。
 次に、津和野の町中から津和野温泉「なごみの里」前を通り、県道17号経由で笹ヶ谷林道に入っていく。さきほどの永明寺林道にしてもこの笹ヶ谷林道にしても、広島のバイクショップ「ライダースショップ広島・緑井店」の店長、山崎正雄さんに教えてもらったものだ。それにしても山崎さんはよく知っている。
 笹ヶ谷鉱山跡を通り、砥石山(481m)の山頂近くを通る笹ヶ谷林道はダート4・0キロ。県道17号に出ると津和野に戻り、津和野温泉「なごみの里」(入浴料500円)の湯に入った。大浴場と露天風呂。ここは人気の湯でワサワサと混みあっていた。

フォトアルバム

津和野駅を裏側から見る
乙女峠への道との分岐点


永明寺林道を行く
峠の素彫りのトンネル


倒木(竹)で通行不能
津和野温泉の前を通っていく


笹ヶ谷林道のダートに突入!
笹ヶ谷林道からの眺め


かなり荒れている笹ヶ谷林道
津和野温泉「なごみの里」の湯に入る


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