カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

第57回 木戸山林道

投稿日:2011年2月26日

2010年 林道日本一周・西日本編

幕府追討の儀、いかがいたしましょう

 周防国の国府のあった防府から国道262号で山口に向かう。
 スズキDR-Z400Sを走らせ、一直線に佐波山峠に向かっていく。峠を貫く佐波山トンネルを抜け出ると、山口盆地へ、スーッと下っていく。山口盆地の中心が県都の山口。周囲を山々に囲まれている。
 山口は防府と同じで周防国になる。ここは「長州」ではなく「防州」なのだ。
 山口のラーメン店で豚骨ラーメンの「ラーメンライス」を食べたあと、国道9号(国道262号と重複区間)で木戸山峠に向かっていく。
 木戸山峠の手前で国道9号と国道262号は分岐するが、まずは国道262号を行く。すぐに山陽と山陰を分ける中央分水嶺の峠(山口と萩の市境)に到達。この陰陽分水嶺の峠に名前はついていないが、「国道262号最高地点 標高423m」の表示がある。この名無し峠は周防と長門の国境。防州から長州に入り、わずかに峠を下ったところで国道を左折。県道62号で坂堂峠に向かっていく。峠下の長瀬という集落を過ぎるとまもなく、萩・山口の市境の坂堂峠だ。この峠も陰陽を分ける中央分水嶺の峠で、長門・周防の国境になっている。
 標高510メートルの坂堂峠は萩往還の峠で、その歴史は古い。
 萩往還というのは長州・毛利藩の城のあった萩から山口を通り、山陽道の三田尻(防府)に通じる街道。今でいえば国道262号に相当する。
 坂堂峠には、峠の歴史の古さを感じさせるかのように、高さ2メートルくらいの花崗岩でできた国境の標柱が建っている。
 それには、
  南 周防国吉敷郡
  北 長門国阿武郡
 と、彫り刻まれている。
 幕末から明治維新にかけて、この坂堂峠は歴史の表舞台だった。
 中国地方の10国を支配していた毛利氏は、関ヶ原の戦いで徳川軍に敗れた。その結果、中国地方の10国を支配していたものが、防長(周防・長門)2国に領地を減らされ、当時としては僻地といってもいい日本海側の萩に追いやられた。
 そのため毛利の徳川への怨念は消えず、毎年元旦には家老が藩主の前に進み出て、
「幕府追討の儀、いかがいたしましょう」
 と、うかがいをたてた。
 藩主は、
「いまだ時期尚早である」
 と、答えるのが常であった。
 毛利はそれを二百数十年もつづけたのだ。
 毛利の徳川への怨念、それが徳川幕府を倒したパワー源のひとつであったことは間違いない。
 長州の維新の志士たちは萩城下から萩往環の坂堂峠を越え、山口から三田尻へ。そこから山陽道→東海道で江戸へと、倒幕を目指して旅立っていった。
 長州藩の城は幕末になると萩からやはり坂堂峠を越え、山口に移された。
 県道62号の坂堂峠から山口に下った。
 山口からは再度、国道9号で木戸山峠へ。木戸山峠も山陽・山陰を分ける中央分水嶺の峠で、周防と長門の防長国境になっている。
 以前は山陽側の山口市と山陰側の阿東町の境だったが、2010年の合併で阿東町は山口市になり、峠の木戸山トンネルを抜け出ても山口市だ。
 木戸山トンネルを抜け出たところで、国道9号を右折し、木戸山林道に入っていく。
「日本一周・中国山陰編」の第1本目の林道だ。
 国道の入口からダート。覆いかぶさる緑のトンネルを行く。山口の市街地のすぐ近くの林道だとは思えないほど山深い風景。谷も深い。
 尾根近くを行き、木戸山(542m)の山頂直下を通り、5・8キロのダートを走り切って国道376号の仁保地峠に出た。
 そこでは国道が山口線の鉄路を跨いで交差している。
 仁保地峠からは国道376号で山口に戻った。
 山口からは再再度、国道9号で木戸山峠へ。
 繰り返しになるが、木戸山峠は周防・長門国境の峠。峠を貫く木戸山トンネルを抜け出ると、山陽側から山陰側に入る。阿東町が山口市に合併したので、行けども行けども山口市。なんと国道9号の島根県境までが山口市になっている。
 県境の願成就温泉(入浴料500円)でDRを停めた。ツバメが空を飛びまわっている。それを見ると、我が家にもやってきたツバメが気にかかり、
「カラスにやられてないだろうか…」
 と、急に心配になってしまう。
 そんな不安をかき消すように、願成就温泉の大浴場と露天風呂の湯に入った。
 湯から上がると、山口・島根県境(旧国でいうと長門・石見国境)の野坂峠のトンネルを抜け、津和野へと下っていった。

フォトアルバム

山口から国道9号で木戸山峠へ
木戸山峠の木戸山トンネル


木戸山林道のダートに突入!
願成就温泉


願成就温泉の露天風呂
山口・島根県境の野坂峠



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