カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

ジンギスカン

投稿日:2009年11月24日

その気にさせる定番メニュー

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北見のジンギスカン


 独特の兜のような形をした鉄鍋で、羊肉と野菜類を焼いて食べるジンギスカンは、これぞ北海道といったボリューム満点の料理だ。食べ方にしても、チマチマと焼くのではなく、ドサッと羊肉や野菜類を入れ、豪快に焼く。モンゴルの英雄チンギスハーンを彷彿とさせるいかにも大陸的な羊料理なのである。
 ところで、この兜形の鉄鍋で羊肉を焼いて食べる料理がどうしてジンギスカンと呼ばれるようになったのかは、諸説があって定かではない。だが、日本人が名づけたことだけは間違いない。
 このジンギスカンが北海道遺産になっている。全道にまたがるテーマの北海道遺産なのである。

 ぼくはいままでに何度か「北海道一周」をしたことがあるといったが、その回り方は決まっている。函館を出発点にし、反時計回りでの一周。これは別に理由があるわけではなく、いつもそうしているので、反時計回りでの一周は心が落ち着くのだ。
 で、北海道に渡ると、猛烈に食べたくなるのが「ジンギスカン」。ジンギスカンを食べないことには心が落ち着かない。何か、ソワソワしてしまうのだ。
 以前は函館を国道5号で出ると、長万部を過ぎ、国道37号で礼文華峠を越えた大岸に、屋根に大きく「ジンギスカン」と書いた食堂があった。そこでボリューム満点のジンギスカンを食べ、北海道を実感し、「また、北海道に戻って来たぞ!」と、心の中で叫ぶのを常としていた。ところがその食堂がなくなってからというもの、どうも調子が狂ってしまう。なかなか、「北海道に戻ってきたぞ!」と叫べなくなってしまったのだ。
 今回も函館を出発し、反時計回りでの「北海道一周」をスタートさせたが、長万部でも食べられず、室蘭でも食べられず、登別まで来てしまった。
 そしてついに神秘的な湖、クッタラ湖畔のレストランで「ジンギスカン丼」を食べた。これは登別で新しく開発されたメニューらしいのだが、ジンギスカンはジンギスカン。おいしくいただいたところで、クッタラ湖に向かって、「北海道に戻って来たぞ!」と叫んでやった。

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登別の「ジンギスカン丼」


 札幌では郊外の羊ヶ丘展望台に行った。ここはかつての月寒布牧場。日本の緬羊飼育発祥の地。その意味では日本のジンギスカン発祥の地といってもいい。修学旅行生が記念撮影するポイントのクラーク博士の銅像前から札幌の町並みを遠望したあと、レストランで本場のジンギスカンを賞味する。十分に熱した鉄鍋の上でジューッと音をたてて焼いた羊肉を食べる。たまらん。北海道の澄み切った空気が味をいっそうひきたててくれる。

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羊ヶ丘のジンギスカン


 滝川では「松尾ジンギスカン」の本店で食べた。
 札幌で食べたジンギスカンは「後付けジンギスカン」とでもいおうか、生の羊肉を焼き、それに特製のタレをつけて食べる。ところが滝川のは「味つきジンギスカン」でタレにひたして味のついた羊肉を焼く。
カブタンとノンタンの北海道遺産」には、これでもか、これでもかといわんばかりに、各地でのジンギスカンが登場するが、そこではカブタンのジンギスカンへの熱い想いが語られている。その【ウンチク】がすごくいい。そこで教えられたのは、兜形をしたジンギスカン鍋には穴ナシと穴アリの2種類あるということだった。穴ナシは「味付けジンギスカン」用、穴アリは「後付けジンギスカン」用ということのようだ。

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滝川の「松尾ジンギスカン本店」のジンギスカン
滝川のジンギスカン鍋


 日高の三石ではみついし昆布温泉の湯に入り、湯から上がるとレストランで目の前の太平洋を眺めながら「ジンギスカン定食」を食べた。北見では何としてもジンギスカンを食べたくって、町中を探しまわり、ついに「じんぎすかん屋モンゴル」という店を見つけ、ジンギスカンを食べながら生ビールをグイグイ飲んだ。羊蹄山を間近に眺める京極では、「ふきだし湧水」のまん前にある「ふきだし荘」で「成吉思汗定食」を食べた。
 宗谷岬の民宿「宗谷岬」の夕食にはラムの焼肉が出た。抜群のうまさ。
「おー、これが北海道!」
 と、感動した。
 札幌・すすきのの焼肉店「しまだ」でもラムの焼肉を食べた。

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三石のジンギスカン
北見のジンギスカン


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京極のジンギスカン


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宗谷岬のラムの焼肉
宗谷岬のラムの焼肉


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札幌のラムの焼肉


 以前、バイク誌の取材で羊肉料理を食べに北海道まで行ったことがある。そのときの記事を紹介しよう。

 スズキDR?Z400Sで北の大地を突っ走り、旭川から塩狩峠を越えて士別へ。
 目指すのは郊外の丘陵地帯にある「羊と雲の丘」。そこで北海道ならではの羊肉料理を食べるために北海道にやってきたのだ。
 士別の市街地を遠望する「羊と雲の丘」は、その名のとおりのきれいな牧場で、100頭あまりの羊が飼育されている。
 牧場の一角には「世界のめん羊館」がある。
 ここはまさに生きた羊の博物館。フランスのシャロレーやイギリスのラッフェル、スペインのメリノ、ロシアのカラクール、オーストラリアのコリデールなど、世界の30種以上もの生きた羊を見ることができる。
「えー、羊って、こんなにもたくさんの種類があるのか…」
 という驚きでもって見てまわった。
「羊と雲の丘」の中心にあるのが物産館&レストランの「羊飼いの家」。
 物産館では「ラム肉ジンギスカン1キロ・プラス3色餅セット」がパッと目についた。ラム肉はもちろんのこと、いも餅、かぼちゃ餅、よもぎ餅の3色餅も士別特産なのだという。
 物産館を見たあと、いよいよレストランで羊肉料理を食べる。
 ここでは「カソリの鉄の胃袋」を思う存分に発揮し、「生ラムのフライパン焼き」、「ラムのリブステーキ」、「羊飼いのカレーライス」と、羊肉料理の3品を食べた。
「フライパン焼き」はフライパンでジューッと焼き上げた熱々のラム肉をタレにつけて食べるのだが、フーフーいいながらいくらでも食べられる。
 ラム肉というと、日本人はすぐに「くさみ」を連想するが、それがまったくないのだ。さっぱり系のタレもラム肉によく合っていた。ラム肉と一緒にジャガイモ、ニンジン、ブロッコリが入っているが、ジャガイモのうまさが際立っていた。
「リブステーキ」は骨つき肉で、しっかりとした歯ごたえがある。これを食べていると、無性に「オーストラリア2周」(1996年)が思い出されてくる。ラム肉の本場、オーストラリアでは大皿からはみ出るようなラムステーキを何度となく食べたからだ。
 ラム肉の「カレーラース」を食べていると、「インド横断」(1990年)がなつかしく思い出される。
 カレーの本場インドでは、ヒンズー教徒はビーフを、イスラム教徒はポークを食べないので、食堂のカレーの肉といえばマトン(ラム)かチキン。
 ぼくは「マトン・マサラ(カレー)」が好きで、毎日のように食べていた。
 明治初期、札幌郊外の月寒牧場ではじめて羊が飼育されて以来、北海道では各地で羊が飼育されるようになった。
 それにともなって、羊肉料理は日本で唯一、北海道で根づいた。
 食文化というのはきわめて保守的で(それがまた食文化のおもしろさでもあるが)、なかなか新しいものは定着しない。羊肉料理はまさにその典型といっていい。
 それが北海道に根づいた一番の理由は、北海道が「日本の新大陸」だからだと、ぼくはそう考えている。

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